職域接種によって集まり始めた、「働く世代」からの貴重な参考データ

2021年09月05日 08:50

画・AIによる人事、ピープルアナリティクスとは。定量データ活用でミスマッチ人事を回避。

職域接種が開始されて2ヶ月あまりたち、企業からの接種報告も続々と届きつつある

政府の発表によると、新型コロナワクチンの2回接種完了者が、国民全体の44.6%に到達したそうだ。うち、65歳以上に限れば、87.1%の方が2回接種を完了している。重症化しやすく死亡率の高い65歳以上を優先して、ワクチン接種を推し進めた国の成果と言えるだろう。国民全体の2回接種完了者が、この短期間で50%に届きそうなのは、国や地方自治体の窓口の成果だけではない。学校や企業を窓口とする「職域接種」が、接種率増加に大きく貢献している。

 そのことは数字が物語っている。現在、1回目の接種と2回目の接種の合計である総接種回数が、1億2000万回を越えているが、そのうちの1200万回以上、総接種回数の約10%を職域接種が占めているのだ。医療機関や大規模接種会場よりも後発であるにもかかわらず、尚且つワクチンの出荷が6月末から制限されている中でのこの数字は、新型コロナワクチンの接種を希望する現役世代のニーズとマッチした。

 職域接種が開始されて2ヶ月あまりたち、企業からの接種報告も続々と届きつつある。

 ハウスメーカーのアキュラホームは、政府が「職域接種」の方針を発表した翌日に実施する意向を発表した企業だ。従業員やその家族はもちろん、取引業者とその家族を対象に、1万人規模の職域接種を進めている。現在、同社が東京と大阪の会場で行っている職域接種によって、2回接種を終えた人数が、すでに8000名を超えた。また、同社では接種者を対象にアンケート調査も実施し、1回目、2回目それぞれの副反応についてや、ワクチン接種後の新型コロナウイルスに対する考え方など、接種者のリアルな声を情報として発信してくれている。

 教育・学習支援事業大手の株式会社グロービスは、社員と講師の家族、在校生・卒業生、投資先企業の社員と家族、グループ企業の社員を対象に職域接種を実施。8月上旬には希望者約5000名に2回の接種を完了している。職域接種のメリットの一つである効率性を重視し、投資先企業やグループ企業まで幅広く対象した点は、これから職域接種を始めようとする企業にも大いに参考になるだろう。

 保険選びサイトを運営する株式会社アドバンスクリエイトも、8月上旬までに、職域接種を希望する従業員と家族へのワクチン投与を完了したと発表している。同社では職域接種だけでなく、業界に先駆けてオンライン保険相談を開始するなど、混乱するコロナ禍において先を見据えた迅速な行動を積極的に遂行している。

 目に見えない新型コロナウイルスとの戦いも1年と半年が過ぎた。玉石混交の様々な情報が飛び交う中、感染も第5波を数えるようになった。変異株の蔓延や感染者の増加など、不安が募る一方で、現状唯一の切り札とされるワクチン接種も確実に進んでいる。ワクチンの効果や安全性についての懸念や、副反応に対する不安は依然として根強く残ってはいるものの、第5波で感染、重症化してしまった方の大半はワクチン未接種である一方、2回接種完了者の感染率や重症化率は、著しく低下したという結果も報告されている。今後、職域接種などによりペースが早まれば、20代から50代を中心とするワクチン接種の声も、これまで以上に数多く届いてくるだろう。ワクチン接種をするか悩んでいる人は、参考にしてみてはいかがだろうか。 (編集担当:今井慎太郎)