携帯電話が普及していく速度も目を見張るものがあったが、「ガラケー」から「スマホ」に切り替わった速度も凄まじい。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査によると、日本国内の携帯電話所有者のうち、スマホを所有している方の割合は92.8%にも上るそうだ。2010年頃は4%ほどの所有比率だったが、当初の不要論を跳ね飛ばし、約10年で9割に突入している。
一方、スマホの進化について、頭打ちという意見も出始めている。最新の認証システムや高性能カメラの導入、画面の大型化や機能の追加など、およそ思いつく限りの進化は出尽くしたのではないかという声もある。実際、ガラケー全盛期に登場したスマホのような、世界がアッと驚くような画期的な機能の追加などは難しいかもしれない。しかし、スマホ自体の伸び代はまだまだあるのではないだろうか。
例えば「バッテリー」では、国内の携帯事業者であるソフトバンクグループ が開発に取り組んでいる次世代電池が注目されている。同社は、世界各国で覇権争いが激化する電池開発市場において、現行のリチウムイオン電池を越える「リチウム金属電池」の開発に取り組んでいる。完成すれば、従来の電池の半分の重量でエネルギーが同じ電池が誕生する。スマホのバッテリー性能が向上することは勿論のこと、産業ロボットの長時間稼働や、ドローンの航続距離増加なども期待されている。
「大型ディスプレイ」に関しては、韓国メーカーのSamsungが他社を一歩リードしている。2019年2月に折りたたみスマホを発表し、世界に衝撃を与えた同社は現在、スマホの更なる大型ディスプレイ化を目指しているようだ。今年5月に開催されたディスプレイ関連イベント「Display Week 2021」でも、三つ折りディスプレイのデモを紹介して大きな注目を集めている。スマホ画面を「Z字」に折りたたむことで、本体サイズのほぼ3倍もの大きさの画面が展開され、その大きさはタブレット画面にも引けを取らない。通信速度の向上で動画のニーズが増えることが予測される中、大画面スマホの需要がどれだけ伸びるか注目だ。
またセンシング機能の向上においては、国内大手の電子部品メーカー・ロームが発表した、防水・小型・高精度気圧センサ「BM1390GLV」に期待が高まる。気圧センサは屋内ナビゲーションや活動量計の高低差データを取得するために普及してきたが、防水と小型化が課題だった。最近のスマホは以前に比べて防水性能が高まっているが、気圧センサは性質上、空気の取り込みを必要とするため、防水対策が難しかった。今回、ロームが開発した最新の気圧センサは、小型パッケージでありながら、最も高い防水等級IPX8に対応している。また、優れた温度特性と耐応力性により、高精度の気圧測定が可能であり、温度補正機能内蔵で、低温から高温まで安定した測定精度を実現してくれる。コロナ禍により、スマホを活用した体調管理や活動分析をする方が増えているが、平地や高山、雨天であっても高精度にセンシングしてくれる気圧センサの登場により、スマホやウェアラブル機器の更なる進化につながるのではないだろうか。
これらは、スマホのさらなる進化を期待させるほんの一部だ。デバイスのみならず、通信の速度や品質もまだまだ向上が見込まれるだろう。スマホの進化はスマホだけにとどまらず、その技術を既存産業の進化や、新しい産業の創出まで転用することができる。進化に向けた技術開発や技術革新が、次なるアッと驚く劇的な進化に繋がることを期待したい。(編集担当:今井慎太郎)