コロナ禍での企業業績は業種・業態により格差が広がっている。パンデミック発生当初からインバウンド需要が蒸発した観光業をはじめ、相次ぐ緊急事態宣言等で各種営業制限を要請された飲食業、移動制限の影響を受けた旅客運輸業、外出自粛ムードの長期化で客足を奪われ直接、間接の影響を受けたアパレル関連業、これらの業種でコロナの打撃による業績不振、倒産が増えている。これに加えアパレル業の不振やテレワーク普及などの間接的影響を受けて急激に業績が悪化した業種がクリーニング関連業だ。
9月14日、矢野経済研究所が「クリーニング関連市場に関する調査」の結果を取りまとめた2020年の当該業種の状況に関する分析レポートを公表している。これによれば、20年のクリーニング関連市場(一般家庭向けクリーニング店、コインランドリー、無店舗・宅配型)の売上高は2825億円と推計され前年の81.3%に減少している。特に一般向けの店舗型「クリーニング店」は前年比72.0%の1724億円と大きな落ち込みだ。「クリーニング店」の売上高はコロナ以前より減少傾向で推移してきており、18年は前年比93.7%、19年は98.6%であったがコロナ禍の20年は72.0%まで急激な落ち込みを見せている。レポートでは「感染拡大に伴うテレワークの普及やワイシャツやスーツを中心としたアパレル製品の販売不振」など間接的要因が背景にあると見ている。
コインランドリーの20年の売上高は1001億円と推計され、営業自粛要請の対象業種とはならなかったこともあり前年比は102.1%とわずかにプラスであるものの、18年は112.5%、19年は108.1%と順調に成長していたものがコロナ禍で急減速となっている。営業制限の対象にはならなかったものの初回の宣言発出時の4月、5月には売上高の前年同月比が10~20%減少した業者も少なくなく、好調な業者がいる一方で市場成長の急激な鈍化で業績不振におちいっている業者も見られるなど格差が広がっているようだ。
また、ネット利用の宅配クリーニング業等「無店舗・宅配型」はコロナ以前には高い成長が見られたが、20年の売上高は101億円、前年比は100.5%と横ばいになり、18年の120%、19年の111.1%から急減速となった。従来から減少傾向であった旧来型の「クリーニング店」はテレワークの普及など生活様式の変容の中で回復の見通しは全く立たない状況だ。(編集担当:久保田雄城)