コロナフレイルという言葉が注目をあびている。フレイルとは脆弱化という意味だが、コロナ禍の自粛生活が長期化し、他人との交流時間や運動時間が減少し、認知力や筋力の低下が危惧されるようになった。特に感染による重症化リスクの高い高齢者は自宅に閉じこもりがちになる傾向が強く、交流不足や運動不足によって老化が加速し認知機能の著しい低下が心配される。九州大学二宮利治教授の推計によれば、運動不足等により糖尿病有病率が増加すると仮定した場合、2025年の認知症人口は730万人と推計され、その高齢者人口に占める割合は20.6%で、5人に1人が認知症を発症する計算になる。
キリンホールディングスが9月の「世界アルツハイマー月間」に合わせて、8月上旬に一般消費者5345人を対象とした「認知機能についての意識調査」を実施、9月6日にその結果レポートを公表している。これによると、コロナ禍の「直近1年間で人と直接会って、交流する機会は減ったか」という問いに対して「減った」と回答した者の割合は全世代の合計で74%であった。年代別に見ると、20代で83%、30代80%、40代78%、50代70%、60代70%、70代以上71%と元々活動的な若年層のほうが交流減少の割合は高くなっているが50代以上でも7割を超えており、全世代で他人との直接交流が大幅に減少しているようだ。
「記憶力の低下が気になることがあるか」という質問に対する回答を「交流が減った」と「減ってない」層に分けて見ると、全世代では「交流が減った」で「記憶力低下が気になる」と答えた者は61%、「減ってない」での46%より多くなっている。さらに60代以上では「減った」の「記憶力低下」は67%と7割近くにのぼり、「減っていない」の49%より著しく多くなっている。
「記憶力低下予防に取り組んでいるか」との問いには、「はい」が全世代で43%、60代で55%、70代以上で61%と高齢層では比較的に高くなっているものの十分な割合とはいえないようだ。取り組んでいる内容については「運動」、「生活習慣」、「知的活動」、「他者との交流」の順で上位に来ているが、60代以上では「知的活動」が「生活習慣」より多く、脳を鍛えることをより意識しているようだ。レポートでは「直近、『コロナフレイル』という言葉が注目を集めているが、体力低下のみならず『記憶力低下』にもケアが必要になってくる可能性が高い」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)