高校の入学式で君が代斉唱時に起立しなかったとして過去に懲戒処分を受けた大阪府立高校の元教諭が定年退職後の再任用を希望したのに再任用されなかったのは「違法」として府に約550万円の損害賠償請求を起こしていた訴訟の控訴審判が9日、大阪高裁であり、本多久美子裁判長は1審判決を変更し、府教委の裁量権の逸脱、乱用にあたるとして、元教諭の主張を認め、約315万円の支払いを府に命じた。
君が代斉唱時に教諭が起立を拒否したために「職務命令違反」などとして戒告処分を受けるケースは各地で起きている。この男性も同様案件で戒告処分を受けていた。
本多裁判長は体罰事案で戒告より重い減給処分を受けていた教諭が再任用されており「合理性を欠く」として「府教委の不採用判断は裁量権の逸脱や乱用にあたり、違法」とした。
一方で、男性は君が代斉唱時に起立することを含め、上司の命令に従うかどうかを再任用にあたって聞かれていたが、本多裁判長は意向を聞くことについては「違法といえない」とした。
しかし、日本弁護士連合会は従来から「大日本帝国憲法下の歴史的経緯に照らし、君が代の起立・斉唱・伴奏に抵抗があると考える国民が少なからず存在している。こうした考え方も憲法19条により憲法上の保護を受けるものと解される」と指摘。
そのうえで「君が代の起立・斉唱・伴奏行為は日の丸・君が代に対する敬意の表明をその不可分の目的とするもので、卒業式等において、これらを職務命令で強制することは思想・良心の自由を侵害するもの」(2011年6月10日付け会長声明)と職務命令で強制することがないよう、従前から関係者に要請している。(編集担当:森高龍二)