【コラム】保守台頭で改憲、歴史修正、道徳教育の動向注意

2021年11月28日 08:54

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自民党は「憲法改正推進会議」を「憲法改正実現会議」に改編し、実現本部本部長に古屋圭司政調会長代行(日本会議国会議員懇談会会長)を据えた

 今回の総選挙で「保守勢力が台頭」した。その影響は歴史修正主義勢力による「教科書」をはじめとした教育界への影響、憲法改正(とりわけ憲法9条への自衛隊追記や緊急事態条項創設)への動きを加速化させる危険性を高めている。

 忘れてならないのは「国民主権=国の意思を国民が決める権利」「基本的人権の尊重=人が生まれながらに持っている、侵すことのできない永久の権利」「平和主義=戦争の放棄・戦力不保持・交戦権否認」という『憲法3原則』の堅持と政府が3原則を遵守し、行政にあたるよう国民が監視し、遵守を求め続けるということだ。

 憲法97条には「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定。

 12条前段では「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とある。

 国民は改憲問題と憲法3原則を反映するために政治、教育、教科書に関心を寄せ、行政・国会の動きに対し、特に目を向け続けていくことが重要になってきた。

 教育界への影響では「基本的人権の尊重」「子どもたちの自由な発想」醸成教育より、安倍政権下で右傾化が顕著になり、個人の基本的な権利教育から「公共心の醸成」「愛国心」「道徳心」「天皇尊崇醸成」などに傾斜していること。

 それは2006年に全面改正された教育基本法に顕著。「美しい日本」を目指すとした当時の安倍氏の標語と改憲勢力団体が標榜する表現は一致し、全面改正した教育基本法に「愛国心・道徳心・公共心」が組み込まれた。

 国旗国歌法制定時に国旗と国歌は個別審議すべきとの声が無視され、強行のうえ「君が代」が国歌になった。神道を重んじ、皇室敬愛運動を進める改憲勢力団体が目指した運動の一環だった。

 そして、最近、改憲機運を高めようとする動きや発言が、自民・維新・国民3党間と岸田文雄総理、自民党幹部に目立つ。自民党の高市早苗政調会長(日本会議国会議員懇談会副会長)に至っては「議員立法作業に取り組むたびに日本国憲法による制約に苦しんできた」などと発言するほど改憲機運醸成に前のめり。

 自民党は「憲法改正推進会議」を「憲法改正実現会議」に改編し、実現本部本部長に古屋圭司政調会長代行(日本会議国会議員懇談会会長)を据えた。事務総長には新藤義孝元総務相が就いた。日本共産党の志位和夫委員長は「この改憲シフトは危うい」とツイッター発信している。

 岸田総理は自民党総裁として「党改革と憲法改正は重要テーマ」と総選挙後、特に強調するようになった。「国会議論の側面支援と国民世論の喚起が新しい憲法改正実現本部の重要な役割」などと語る。維新や国民民主の改憲への歩調が同じ。こうした保守勢力の動きは参院選までの間、特に目を離せない状況におかれている。

 SNSでは「投票率が低い日本において、実質的に2割強の支持しか得ていない政党が「憲法」を好き勝手に弄ぶとか。いくら忙しくても、どれだけ政治に興味がなくて国の未来を考えることが億劫でも、間違ってる。傍観し看過すればするほど未来に禍根を残す」と警鐘を鳴らすつぶやきもある。(編集担当:森高龍二)