酒類、前年割れ続く。家庭向け好調も、業務用低迷続く。増税が追い打ち

2021年12月29日 06:38

 新型コロナウイルス感染症の流行に伴う営業制限や自粛ムードで酒類を提供する飲食店は大打撃を受けた。これに伴いメーカー出荷ベースでも業務用の酒類は大きなマイナスとなった。一方で、巣ごもり需要により家庭用は好調であったものの、業務用と家庭用を合わせたトータルではマイナスとなっている。コロナ以前から酒類の市場は横ばいか微減傾向で推移してきたが、2020年の感染流行の中で市場は大きく縮小、21年度も前年比で微減の見込みでコロナ以前への回復は難しいようだ。さらに酒税改正の影響でビール類の新ジャンルで販売が低迷しているようだ。

 12月30日に矢野経済研究所が「酒類市場に関する調査(2021年)」の結果レポートを公表している。これによれば、20年度の酒類市場はメーカー出荷額ベースで、3兆2050億円、前年度比92.1%と大きく縮小した。販売チャネル別では、新型コロナの影響で業務用チャネルが未曽有の苦境に陥る一方、巣ごもり需要により家庭内消費が増加し家庭用チャネルは好調であった。21年度も緊急事態宣言が繰り返し発出されるなどコロナの悪影響は強く、市場は3兆1470億円、前年度比98.2%となる見込みで、市場が大きく縮小した前年度の水準にも回復できない状況となっている。

 20年10月の酒税改正も市場に影響を与えているようだ。ビール類の酒税は26年までに段階的一本化が実施される予定だが、1回目の改正で350ml当たりビールは7円の減税、発泡酒は据え置き、新ジャンルは約10円の増税となった。このビール減税の影響で巣ごもり需要のある家庭用では、各社の主力ブランドの缶製品を中心に20年10月以降、前年同期比がプラスとなったメーカーも見られる。一方で、増税となった新ジャンルについては改正後に販売が低迷し21年に入ってもその傾向が続いているようだ。

 21年秋以降、感染状況が落ち着き経済活動は徐々に正常化に向かっているものの、オミクロン株の登場などで未だ先行きは不透明なため国民の消費行動は慎重姿勢のままだ。レポートは21年度の前年割れを見込んでいるが、「市場が回復基調に戻るのは2022年度からになると予測する」としている。テレワークの普及などもあり、業務用を中心に一度離れてしまった客足を戻すためには長い時間がかかりそうだ。(編集担当:久保田雄城)