一昨年や昨年に比べ、感染者数も比較的落ち着いたスタートを切った2022年。約2年の間で、コロナ禍の生活に慣れてきたという方も多いだろう。外出時のマスクの着用や、手洗いや消毒の徹底など、コロナ禍以前では考えられないような、ライフスタイルの大きな変化を経験してきた。ビジネスの面においても、人との接触や密室での会議は減少し、出社時間を分散したりするなど、大きな変化が続いている。リモートワークの導入もその一つだ。
エン・ジャパン(株)が昨年の12月、全国の企業を対象に、リモートワーク導入後の変化に関する調査を行なった。その結果、「新型コロナウイルスの影響が顕著になってきた2020年2月以降に、リモートワークを導入した」という企業が60%にも上った。海外に比べ、なかなかリモートワークの導入が進まないと言われていた日本だが、感染症対策として、平時にない迅速な対応が為されたと見て取れる。
顧客との商談を進める「営業」にも、大きな変化が現れている。従来の対面営業が困難になる一方、WEB広告やSNSで顧客を絞り込み、ターゲットユーザーとの商談はオンラインツールを活用することで接触を図る「インサイドセールス(非訪問型営業)」が台頭して来ている。顧客情報や営業活動の管理が効率良くできることもあり、元々欧米では主流となりつつあるインサイドセールスが、コロナ禍の影響で日本にも根付き、今や高額商品までもがインサイドセールスの対象となっている。
大手自動車メーカー・本田技研工業は、四輪新車オンラインストア「Honda ON(ホンダオン)」を、昨年10月4日に開設した。ホンダの乗用車を専用Webサイトで購入できる新しいインターネット販売方法で、国内自動車メーカーとしては初の取り組みだ。車離れが叫ばれる若い世代にターゲットを絞り、スマホ一つで手続きが完了する点がオンラインストアの売りだ。複数の会社が関わるため、手続きが複雑な海外メーカーのECサイトとは異なり、仕入れから契約まで、全てのシステムをホンダグループ内に一本化することで、コスト適正化・顧客サービスを向上できると気合い十分だ。
また、「住宅」のような、一生に一度の大きな買い物でも、オンラインでのコミュニケーションが活用されている。大手住宅メーカー・積水ハウス株式会社は、土地の選定や間取りなどの設計、資金計画からアフターケアに至るまで、全て自宅にいながらリモートでプロに相談できる、「おうちで住まいづくり」というサービスをネット上で展開している。
住宅展示場や実例を見学するのが好きな人も多いだろうが、コロナ禍では以前ほど気軽に見学できない。「おうちで住まいづくり」内のコンテンツの一つに、実際に住んでいる住宅を紹介するというWEB動画がある。紹介する住宅は同社の社員の自宅であり、自宅の案内役も、家主である社員という、ユニークな動画となっている。「社員の自宅紹介」と銘打った動画は、再生回数が80万回を突破し、まだまだ伸び続けている。こだわりの紹介や、考えられた動線など、家を見るというだけでなく、実際の生活を感じられることで、イメージが湧きやすい点も人気の秘訣だ。住宅のプロがこだわった住まいから、自身の住まいにも取り入れたいヒントが見つかるのではないだろうか。
通信技術が日進月歩する現代社会において、いずれの業界においても、インターネットは重要なツールになることは間違いない。この先、新型コロナが収束に向かったとしても、流行以前の元通りの世界に戻ることはない。リモートの需要が一定数あるということがわかった世界になるのだ。新たな需要で事業展開や営業活動の可能性も広がったとも言えるだろう。今年も社会の変化に対応した新たな取り組みに注目していきたい。(編集担当:今井慎太郎)