日本経済は昨年春に景気の底を打ち、以降回復傾向で推移している。景気回復の中、相次ぐ緊急事態宣言の発出等により移動制限や営業制限などの影響を受けた業種・業態では経営状態の悪化が進行するなど、企業の景況は二極化している。新型コロナの影響を受けているのは対個人向けサービス消費関連が中心で、これらの業種は小・零細企業が大半を占める。
10月8日、東京商工リサーチが2021年度上半期(4-9月)における小規模倒産(負債1000万円未満)の調査結果を分析したレポートを発表しているが、これによれば4月から9月の負債1000万円未満の企業倒産は236件で前年同期比33.5%の減少と景気回復やコロナ支援策の効果が相まって大幅な減少になっている。資本金別に見ると、個人企業他を含む1千万円未満が223件で小規模倒産全体に占める割合は94.4%で、大多数が少・零細企業だ。小規模倒産のうち新型コロナ関連の倒産は57件で、構成比は24.1%と約4社に1社がコロナに影響を受けた倒産だ。前年同期の26件と比較すると2.2倍と大幅に増加している。
産業別に前年同期比を見ると、10産業のうち3産業で増加、6産業で減少、1産業が同件数だった。最多は、やはり少・零細業者の多い「サービス業他」の108件で小規模倒産全体に占める割合は45.7%と半数近くを占めている。「新型コロナ」関連倒産では、「サービス業他」の34件が最多で構成比は59.6%、前年同期14件と比較すると2.4倍に増加している。業種別には、「酒場,ビヤホール(居酒屋)」が5件で最多、次いで「喫茶店」3件、「美容業」2件、「小売業」8件と続いている。
原因別では、「不況型倒産」(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)が184件で小規模倒産の77.9%と8割近くを占めている。小・零細企業では、業績改善がなかなか進まず、先行きの見通しが立たないまま事業継続を断念するケースが多く、9割以上が消滅型の破産を選択している。現在、感染状況は落ち着きを見せ経済活動は徐々に正常化しているが、レポートは「事業の本格的な再開に伴い、新たな運転資金の需要が見込まれる。長引くコロナ禍で財務面を含めて体力は疲弊しており、『黒字倒産』の発生など今後の動向が注目される」「これまでの金融支援策に加え、新たな事業再生に向けた支援策が必要となってくるだろう」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)