世界がカーボンニュートラル社会実現に向けEV化へ急激にシフトしている中、日本はEV用充電器などの社会インフラ整備の水準で大きく遅れをとっている。日本でも2020年秋に菅首相(当時)が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、その後、21年1月国会で「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と表明、35年以降は内燃機関のみの車両の販売は禁止となる。これを実現するためには充電器インフラの整備が前提となり、これに関連する市場は今後大きく拡大して行く見込みだ。
昨年末27日、富士経済が「EV/PHV用充電器の国内市場調査」の結果をとりまとめた市場レポート「EV/PHEV充電・日本市場の全貌と将来性」の一部を公表している(調査時期は21年9~11月、関連企業へのヒアリング、社内データベースにより調査)。これによれば、20年は新型コロナ流行の影響で民間設備投資が抑制され、充電器市場の伸びも鈍化したものの、21年以降はカーディーラーでの公共用の増設などにより堅調な市場拡大が見込まれている。22年以降は、10年前後に設置された充電器の更新が本格化するとみられ、車種の増加に伴い主流となっている3kW機から6kW機への更新・新規設置が進むと予想されている。これまでは家庭用と公共用が市場をけん引してきており、今後も公共用で堅調な伸びが予想され、その過程でDC急速充電器の導入も増える見込みだ。職場用や商用車用は未だ設置数が少ないもののEV/PHVの普及に伴い市場の拡大が期待されている。
現在、国内のEV/PHV用充電器はAC普通充電器が9割以上を占めている。35年でのコネクター数の予測を見ると、家庭用が4万9650個で20年比133.2%、公共用が4万3570個で同132.1%、職場用が2万1100個で同2.4倍、商用車用が1万7890個、同4.4倍となっており、職場用と商用車用がシェアは少ないが政府の方針を受けて大きく拡大する予測だ。充電渋滞対策や大出力機の追加などで増設需要が予想されるDC急速充電器のコネクター数について35年予測をみると、公共用が1万1530個で20年比151.0%、職場用が560個、同5.3倍、商用車用が610個、同7.2倍となっている。DC急速充電器の普及課題は高価格な点にあるが、レポートは「政府主導の目標である『2030年までに公共用急速充電器3万基』については、具体的ロードマップはまだ確定されておらず、達成に向けては導入コストに対する助成制度など、早期の対策が望まれる」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)