自動車業界では今、EV(電気自動車)へのシフトが急務となっている。EUでは、欧州委員会が2021年7月に発表した「2030年までに達成すべき温室効果ガス削減目標」に向けた政策案を発表。2035年にハイブリッド車(HV)を含むガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止することを表明した。日本政府も同様に、2030年代半ばを目途に日本国内における新車販売のすべてをEVやHVに切り替え、ガソリン車の販売を事実上禁止する目標を掲げている。
しかし、車好きのユーザーの中には、この動きを残念がる人が多いのも事実だ。EVは排気ガスを出さない分、ガソリン車はもちろん、HVと比べても環境に優しいといわれている。また、騒音や振動も少なく、エンジンルームが必要ない分、デザイン的な面でも自由度が高い。さらには加速性能も高く、快適な走行が楽しめる。その一方で、一回の充電で可能な航続距離の問題や、充電に時間がかかるなどのデメリットを懸念する声もある。また、パワーの面でもガソリン車には及ばないと考えている人も多いようだ。しかし、本当にそうなのだろうか。
例えば、今年1月14日~16日の3日間、東京幕張メッセで開催された「東京オートサロン2022」では、スバル<7270>のモータースポーツ部門を統括するスバルテクニカインターナショナル(STI)が、
同社が独自開発した4モーター4輪トルクベクタリング技術を新しく採用した、システム最高出力800kW(1088馬力)という、高出力の新型ハイパーEV「STI E-RA」を公開。モータースポーツファンからも、大いに注目を集めた。
スバルだけではない。トヨタ<7203>も昨年12月、東京江東区にある同社のショールーム「MEGA WEB」の中で、レクサスブランドのEVスポーツカーを世界初公開している。さらには、フェラーリやマクラーレン、ランボルギーニ、ポルシェといった名だたるスーパーカーブランドもこぞって、大馬力のPHEV やHV、EVのニューモデルを発表。EVスポーツカー時代の到来といった様相を呈している。
中でも注目したいのが、ポルシェ初の本格EVとして日本でも人気を集めそうな「タイカン」だ。タイカンの大きな魅力は、テスラやアウディなどの現行EVに搭載されているバッテリのおよそ2倍の電圧となる800Vの大容量バッテリを搭載している点だ。これにより、今までのEVを凌駕するハイパワーの獲得と大容量急速充電に対応。そして、その駆動の要となる高電圧インバーターには、日立Astemo社製が採用されている。また、インバーターを制御するゲート・ドライブ回路の電源を担うフライバックコンバーターに使用されているパワー半導体も、日本の電子部品メーカー・ローム株式会社<6963>のSiC MOSFET(SCT3160)を採用。ポルシェ初の本格EVとして、制御系にいたるまで、徹底的な高圧対応が施される中、日本メーカー製の電子部品が選択されているのは、それだけ日本メーカー製品の品質が認められている証だろう。
タイカンは加速性能も高く、価格も日本円で1200万円から。最上級グレードでも約2500万円と、他のスーパーカーブランドに比べて現実的なお値段なので、日本の街でも今後、見かける機会が増えてくるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)