欧州や新興国経済の減速などにより経済活動が停滞、貿易収支が2年連続の赤字となるなど、明るい兆しの見えなかった2012年。一方、2013年は、第2次安倍内閣が掲げた金融政策、財政政策、成長戦略により円安基調となり、輸出銘柄を中心に株価が上昇に転じるなど、上々の滑り出しを見せている。また、来年の消費税率引き上げを見越した駆け込み需要も見込まれ、国内経済には改善の兆しがみられる。こうした中、帝国データバンクが、100業界231分野の業界動向を調査。2013年度の業界天気を予測、発表した。
業界天気図とは、各業界の生産や販売、売り上げ、収益動向などから景況感を総合的に判断したもの。最も景気が良い状態を「快晴」、以下「晴れ」「薄日」「曇り」「小雨」「雨」と続き、最も景気が悪い状態を「雷雨」と7段階で表している。
結果、100業界231分野の2013年度天気予測は、「快晴」が0、「晴れ」が9分野、「薄日」が41分野、「曇り」が75分野、「小雨」が60分野、「雨」が35分野、「雷雨」が11分野となっている。前年度から78.8%の分野が横ばいで、「曇り」が目立つものの、改善の兆しが見られると予測されている。
「晴れ」と予測されている分野には、総合商社や介護サービス・有料老人ホームが挙げられる。総合商社はインフラや資源事業が引き続き収益源確保に動くとみられ、介護サービス・有料老人ホームは堅調な需要増が見込まれるという。また、「戸建て」「マンション」などの住宅分野は、政府による取得支援策の継続や消費税引き上げ前の駆け込み需要などが見込まれるため、昨年は「曇り」であったものが今年の予測は「薄日」に。一方、同じ「薄日」と予測されている自動車製造の分野は、エコカー補助金終了の反動減が懸念されるため、昨年の「晴れ」から後退している。
一方「雨」と予測されているのは、「家電小売」や「紙・パルプ」などの分野である。「家電小売」に関しては、特に薄型テレビの需要回復の兆しが見えないことが、「紙・パルプ」に関しては、安価な輸入紙の流入量増が環境を悪化させているという。さらに、「雷雨」と予測されたのが、「出版社・出版取次」や「一般電気事業者・卸電気事業者」などである。電子書籍が漸く波に乗り始めたとはいえ発行部数の減少は止まらず、電力会社は燃料費高騰などのあおりを受けて軒並み収益を悪化させている。
こうして見ると、回復基調にあるとはいえ、「雨」や「雷雨」などと予測されている分野の、その要因は根深く一朝一夕に好転するようなものではない。一方「晴れ」や「薄日」と予測されている分野のその要因は、消費税増税による特需など、一時的なものが多い。となると、安定成長・回復と言うには不安が残る状況である。改善の兆しが見られるというが、余談は許さない状況であろう。(編集担当:井畑学)