ローソン<2651>が若年層の賃金アップ策を発表し、安倍首相が経団連に向けて従業員の所得を増やすよう要請する一方、春闘における賃金アップ要請を見送る労働組合が多く見られるなど、近時、所得に関する話題が溢れている。こうした中、帝国データバンクが、2013年の賃金動向に関する企業の意識についての調査結果を発表した。
有効回答企業数1万461社、毎年1月に実施されている本調査は今年で8回目となる。結果、2013年度の賃金改善を「ある」と見込む企業は39.3%と前年度見込みを1.8%上回り、「ない(見込み含む)」と回答した企業は同32.3%と前回調査の35.1%を下回った。業種別では、卸売業とサービス業で4割を超える企業が「ある」と回答。全体を下回った建設業においても、前回調査と比較すると3.2%の上昇となった。
また、賃金改善の具体的内容では、ベースアップ実施企業が構成比32.0%、賞与(一時金)が同21.0%という結果に。リーマンショック前の2008年度見込みではベアが同40.0%、賞与が同22.1%であったが、リーマンショック後の大幅な落ち込み以降、ほぼ横ばいで推移している。さらに賃金を改善する理由としては、「労働力の定着・確保」が最多であり、「業績拡大」も5割を超えている。一方、改善しない理由では「自社の業績低迷」が最多に。加えて、実態経済が確実に良くなっていない状況では、賃金は当面横ばいで考えざるを得ないという現状も見られる。
一月に閣議決定された税制改正大綱では、雇用・所得拡大に向けた税制の優遇措置が盛り込まれている。これを好感する企業がある一方、景気が回復していない以上、いくら税制を改正されたところで雇用も賃上げも出来ないとする企業も少なくない。さらに4月からは高齢者雇用に関しても考慮する必要があり、容易には賃金改正を実施出来ないのが現状であろう。景気が好感触とはいえ、アベノミクスの行方や新制度下での動向など、暫くは様子見の現状維持が精一杯なのかもしれない。(編集担当:井畑学)