弱毒化したともされるオミクロン株の流行やワクチン接種の普及、治療薬の開発、医療体制の整備などを背景に世界は一斉に経済活動の再開へ向かっている。このため資源・原材料への需要が急増し、世界的に原価価格の急騰が起こっている。日本でも既に企業価格高騰が消費者物価を上昇させている。なかでも食料品価格の高騰は家計を直撃する、賃金が伸び悩んでいるなか消費低迷による景気回復腰折れという状況にもなりかねない。食料品価格の高騰の背景は多様であるが思いがけない理由もあるようだ。それは世界的な脱炭素化に向けた動きが加速しているなかでバイオ燃料に対する需要が増加しており、その原料としてトウモロコシ、大豆、サトウキビなどで価格上昇が誘発されているようだ。
2月16日、日本総研(日本総合研究所)が定例のリサーチ・アイで「市況高騰で食料品の値上げラッシュ」に関する分析レポートを公表している。これによれば、世界の食料品市況は高騰しており前年比ベースでは2008年以来の高い伸びとなっている模様だ。この世界的な高騰の背景としては、需要と供給双方の要因が存在するとレポートは分析している。供給面においては、世界的な天候不順で多くの食料が不作となっており、また新型コロナ感染の広がりで活動制限が実施されている影響で農業従事者が不足ししており、このため食料品の生産が停滞している模様だ。一方、需要面では、世界的な経済活動の再開により食料品への需要が急増していることも大きな要因だ。
さらに特筆すべきは、世界各国の脱炭素化に向けた取り組みが加速しており、この影響でバイオ燃料への需要が拡大し、その原料であるトウモロコシ、大豆、サトウキビなどの需要が増大している模様だ。例えば米国ではバイオ燃料向けに使われる大豆油への需要が急増し、消費量全体の4割を超える見通しとなっている。
日本では輸入品高騰の価格転嫁は1年程度遅れる傾向があるが、既に多くの食料品メーカーは昨年来の市況高騰でコスト増を価格転嫁以外ではカバーできないと判断しており、レポートは「穀類、肉類、調味料など幅広い品目で値上げの動きが広がっていく公算大」と指摘している。さらに「食料品の値上げは消費者物価を大きく押し上げる見込み」で、「4~6月期の消費者物価は前年比+1%台後半まで上昇する可能性も。インフレによる購買力の低下が懸念される状況」と分析している。(編集担当:久保田雄城)