ロシア原油禁輸、1バレル=140ドルで所得流出21兆円。GDPは前年割れ。~日本総研

2022年03月17日 06:14

画・ロシア原油禁輸、1バレル=140ドルで所得流出21兆円。GDPは前年割れ。~日本総研。

日本総研がレポート。ロシア産原油禁輸措置が広がれば、1バレル=140ドルの可能性。この場合22年度上期の交易損失増加額は21兆円、国内総所得は前年割れ

 エネルギーや穀物の価格が高騰している。欧米を中心に新型コロナ感染症対策の経済活動制限が一斉に緩和されたことが主要な背景であるが、2月24日からのロシア軍のウクライナ侵攻で、さらにこの傾向は強まることは間違いない。ロシアは原油や天然ガス等のエネルギーと小麦などの穀物の輸出大国であり、ロシアに対する世界的な制裁はこれらの価格を高騰させることは確実だ。米国のWTI原油先物も今月には1バレル100円を超えており、専門家の見方ではこの先半年は世界的に原油価格の高騰は続く見込みだ。先月末の帝国データバンクのアンケートでは7割超えの企業がエネルギー価格高騰の悪影響を受けるとしており、物流部門では8割近くに達している。ロシア原油禁輸の影響は日本のマクロ経済全体に悪影響を与え、コロナ禍から回復傾向にあった日本経済もマイナス成長に転じる懸念もある。

 3月11日に日本総研(日本総合研究所)が定例のレポート「リサーチ・アイ」で「原油価格が高止まりすればわが国の景気回復は頓挫。1バレル=140ドル定着で半年の所得流出は21兆円」というレポートを発表している。これによれば、WTI先物価格は一時1バレル=130ドル台に達しており、ロシア産原油の禁輸措置が欧州諸国などに広がれば原油価格がさらに上昇するおそれがあるという。

 レポートによれば、仮にWTI原油先物が本年4月から9月にかけて1バレル=140ドルで推移した場合、国内総所得(GDPの所得面)は2022年度上期に前年割れになるという計算だ。前年割れの主要因は、資源輸入先への支払いが増加し所得の海外流出が増加することにあるが、その増加額は22年度上期で21兆円とGDP増加額の2倍に達する計算だ。資源価格高騰で企業収益が圧迫され、設備投資も下押しされ、また光熱費の値上げで個人消費も下振れ、年度上期の実質GDPも年率1%ポイント下振れの計算だ。消費者物価は7~9月期に前年比2%超の上昇と見込んでおり、さらなる消費の冷え込みも心配される。

 岸田首相も13日、「ガソリン価格172円を当面維持」を表明している。レポートの提言では「ガソリン価格上昇を抑えるため、石油元売り会社へ補助金を供与。仮にこの政策を9月末まで継続した場合、消費者物価の前年比は0.3%抑えられる計算」としているが、「補助金政策の効果は限定的。エネルギー資源の輸入依存度を引き下げる取り組みが不可欠」としている。(編集担当:久保田雄城)