欧米を中心に世界各国でコロナ規制の撤廃が進められ経済活動に活気が戻っている。日本でも感染者数の減少に伴い、春からコロナ規制は大幅に緩和され、経済活動の諸指標は上向きで推移している。しかし、この経済活動の再開にともない世界的な供給網の混乱、需給ミスマッチが生じ、昨年からエネルギー価格や穀物価格の高騰が起こっている。さらに2月下旬のウクライナ侵攻後、日本では急速な円安が上乗せされ、加工食品を中心に値上げラッシュとなっており、経済回復を下押しする懸念材料となっている。
5月30日、富士経済が「27カテゴリー408品目の加工食品の国内市場調査」の結果レポートを公表しているが、これによれば「原材料、物流費など多様なコストが上昇しており、価格改定を行う商品が増えていることから市場は回復に向かうものの、2026年の市場はコロナ禍前となる2019年の規模まで戻らないとみられる」状況のようだ。
20年は、新型コロナの流行に伴い在宅時間が増えたことで内食需要が活性化し、基礎調味料などの市販用が伸びたものの、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置に基づく外食店等の休業や時短で、業務・加工用が大幅に減少し、市場は前年比2.8%減の22兆1065億円と縮小した。21年も内食需要の高まりが続いている一方で、外食機会は増えたものの業務・加工用がわずかに減少し、市場全体では前年比0.4%増の22兆1936億円と微増の回復に終わっている。内食需要の高まりは続いているものの、コロナ禍の長期化によって調理疲れも見られ、調理済商品などへの需要シフトが起こっている模様だ。
今年22年は、引き続き市販用の簡便性の高い品目を中心にコロナ前の19年を上回る需要の増加が見込まれるとともに、外食店への規制緩和により業務・加工用も拡大に転じると期待されるなど、市場は前年比1.3%増の回復傾向が予測される。
新型コロナの影響による減少から21年以降は拡大傾向が維持されると見込まれているものの、原材料、物流費など多様なコスト上昇に加え、円安による輸入原価高騰も上乗せされ、既に多くの飲食料品メーカーが多数の商品で値上げを発表しており、この値上げラッシュにともなう消費者の節約ムードが下押し要因になると予想される。これにより「市場は回復に向かうものの、2026年の市場はコロナ禍前となる2019年の規模まで戻らない」とレポートは予測している。(編集担当:久保田雄城)