P.F.I. 事業の成功例、複合スポーツ施設「尼崎スポーツの森」

2011年11月07日 11:00

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P.F.I.事業の理想的な成功例である兵庫県の複合スポーツ施設「尼崎スポーツの森」。プールが活況を迎える夏のハイシーズンを終え、現在は約3週間の工期を経て、屋内50mプールがスケートリンクに変身している。

 1999年、公共事業の効率化のために、施設の建設や運営を民間に委ねるP.F.I.法施行が実施された。以来、全国各地で文化・スポーツ施設をはじめ、学校や病院、庁舎などさまざまな公共施設でP.F.I.方式による施設運営が活発に行われるようになっている。

 そのような中、P.F.I.事業の理想的な成功例の一つとして、全国各地の事業体から注目を集めているのが、民間企業であるヤマハ発動機が構成員となるSPC(Special Purpose Company)あまがさき健康の森により運営を任されている、兵庫県の複合スポーツ施設「尼崎スポーツの森」だ。同施設は、尼崎21世紀の森づくり構想の一環として2006年にオープン。屋内温水プール、フットサルコート、ウォーターパーク「アマラーゴ」、森のこども広場等を備えている。初年度の同施設の計画入場者数は20.6万人。これは民間企業で言えば営業目標に当る数字だが、実際にはそれを大きく上回る26.8万人の利用者が訪れている。以来、施設利用者は毎年3万人から10万人規模で増え続け、昨年度は46.3万人超、今年7月には有料入場者数の累計が200万人を突破しているという。

 ここで運営責任者を務める今里藤勝館長が、ヤマハ発動機のプール事業推進部から同施設へ赴任したのは2年前。「長くマリン製品やプール製品の営業職を務めてきたことから、製品・サービスとお客様を結びつける喜びはもちろん、反面その厳しさについて誰より実感しています。たくさんの人々に質の高い製品やサービスをご利用いただきたい、そのお客様の意見を次の製品やサービスに活かしたい、そう願う気持ちは営業時代と変わらない」という。その上で、サービスに対する行政と民間の大きな違いを「視点、そして発想の基点」と位置付けている。「何かを企画する時も、またそれを実行に移す時も、まず一番に考えるのはお客様の気持ち。ふと気がつくと、無意識のうちにお客様の目線やスタンスに置き換えてものを考えたりしていますから、これはもう、習性と言えるかもしれませんね(笑)」。

 プールが活況を迎える夏のハイシーズンを終え、現在は約3週間の工期を経て、屋内50mプールがスケートリンクに変身している。「たくさんの方にご利用いただきながら、お客様に安全で楽しい一日をご提供するのが第一。加えてお客様と直に接することで、プール製品の企画・製造のヒントを発見することもあります」と今里館長。

 なお、ヤマハ発動機のプール事業推進部では他にも「りすぱ豊橋」(愛知県)など計4か所の公共施設で現在、P.F.I.や指定管理者制度による施設管理・運営を実施。同社は、公共施設の運営事業を通じた目標として「健全でたくましい子供の育成」「自活する高齢者のサポート」を掲げており、施設のコンセプトづくりや設計から運営までをトータルに行っている。