止まらぬ円安、「脱炭素の設備投資」へも悪影響。素材産業の収益見込、下方修正

2022年06月29日 06:33

画・止まらぬ円安、「脱炭素の設備投資」へも悪影響。素材産業の収益見込、下方修正。

日本総研がレポート。円安が素材産業の収益を圧迫。脱炭素関連など設備投資へのマイナス影響に懸念。素材産業の収益見通しは資源高の影響で下方修正

 急激な円安が進行している。2月下旬のウクライナ侵攻後の3月から、世界各国の利上げ期待が急激に高まり、急速な円安へと転じ今のところ落ち着く気配はない。円安の効果は、輸出型か輸入型かにより各産業で異なっているというものの、日本産業全般としては、急速な輸入コスト上昇により、悪影響を受けている産業が支配的に見える。日本産業の設備投資計画は良好な数字を示しているというものの、円安によるコスト高騰で、輸入価格に影響を受けやすく、脱炭素化投資を積極的に行っている素材産業での設備投資減速も懸念される。

 日本総研(日本総合研究所)が6月22日、定例のレポート「リサーチアイ」で「円安が素材産業の収益を圧迫。~脱炭素関連など設備投資へのマイナス影響に懸念~」といレポートを公表している。レポートでは、円安は以下の2点を背景に素材産業の収益を圧迫するとしている。第一に、円安はそれ自体、輸出入価格の押し上げを通じて各産業の収益に及ぼす効果は様々だが、輸出の多い電子部品や輸送機械などの加工産業と異なり、素材型産業では輸入ウエイトが高く、輸入価格の上昇によるマイナス影響が強く響き、石油・石炭製品や非鉄金属といった業種では、3月以降の円安で減収圧力が付加価値対比10~20%となっていると試算されている。

 第二点は海外投資効果で、円安は海外子会社からの配当増など海外投資による円建て収益を押し上げる効果を持つというものの、電気機械や輸送機械などの加工業種や金融保険業などでは海外直接投資による収益が大きいが、素材産業の直接投資は化学を除けばその効果は極めて小さいと試算される。

 レポート内の産業連関表を用いた「円安が付加価値に及ぼす影響」の推計を見ても、石油・石炭、電力・ガス、非鉄金属、鉄鋼など素材産業でのマイナスの影響は大きくなっている。実際、素材産業の収益見通しは、原材料高の影響と受けて、軒並み下方修正となっているようだ。輸出型の多い加工業種では総じて増益の見通しを維持している一方で、素材産業では減益見通しに転じている企業も多く、石油石炭製品や非鉄金属では減益率が3割にまで至っているようだ。素材産業では、脱炭素関連も含め積極的な設備投資が計画されている。急激な円安による減収圧力が今後の投資計画の進捗にどの程度マイナスの影響を与えるのか懸念される。場合によっては我が国産業の脱炭素化の進捗に大きく影響することになる。(編集担当:久保田雄城)