コロナ禍で在宅時間が増えたこともあり、これまで以上に住まいに「便利さ」や「快適さ」が求められるようになっている。でも、各々のライフスタイルやライフステージによって、人それぞれ基準は異なる。例えば子育て世代の家庭と一人暮らしの高齢者の住まいでは、住まい手が感じる不便さや課題、ニーズは違ってくる。ましてや、多様な世帯が同居するマンションなどの集合住宅ではなおさらだ。
そんな多様なニーズに応えるため、8月9日、首都圏・中部・関西・福岡エリアでマンション事業を展開する大手住宅メーカーの積水ハウスは、集合住宅における顔認証システムを活用した取り組みにおいてNEC<6701>と連携することを発表した。
顔認証システムは、鍵やパスワードなどに変わるもの、もしくはそれらをさらに強固にするものとして、セキュリティ用途を中心に開発が進められているもので、オフィスや工場などの入退室管理や、決済システム、パソコンなどへのログイン、銀行や受験会場などでの「なりすまし」の防止などでも活用が広がっている。
この分野では、NECは世界トップクラスの生体認証技術を保有しており、様々な領域でデジタルIDを活用したサービスを展開。集合住宅においても、顔認証技術を活用した「次世代マンションサービス」を提供している。
両社は、集合住宅における様々な課題解決のため、テクノロジーを活用し、他の関連サービス事業者との連携や共創も検討することで、鍵の変わりだけではなく、安全・安心・快適で利便性の高い住生活環境の実現に向けたサービス展開に取り組んでいくとしている。今後検証を予定しているサービスとしては、 宅配事業者やネットスーパーとの連携による居住者不在時の置き配、飲料メーカーや小売事業者との連携による自動販売機の顔認証決済、決済代行事業者との連携による、共用施設の予約や利用料等の顔認証決済などを上げている。
その第一弾として、まずは積水ハウスが東急田園都市線「溝の口」駅近くに現在建設中で、2023年11月に完成が予定されている総戸数123戸の分譲マンション「グランドメゾン溝の口の杜」において、NECの顔認証システムを活用したエントランス及び各住戸の玄関ドアの解錠や共用施設の予約・解錠、家族の帰宅通知、事業者との協業によるウォーターサーバー用ボトルの置き配などの提供を行うという。
この取り組みは、顔認証システムを活用して、セキュリティ向上というメリットに加え、煩わしいことがスムーズに行えたり、子どもの在宅確認や高齢者の安否確認など、離れて暮らす家族の安心にもつながる。普及すれば、新たな住宅サービスやビジネスモデルが生まれる可能性を秘めている。2社の連携の今後の展開に期待したい。(編集担当:藤原伊織)