民間と行政がそれぞれに有する個人情報を共有し利活用できるようにするため、「個人情報保護」の在り方が徹底されなければならないが、されないまま「デジタル庁設置」にむけたデジタル改革関連6法が12日、自民、公明などの賛成多数で成立した。立憲民主党はデジタル庁設置法など3法に賛成したが、個人情報保護が不十分な3法案には反対。日本共産党は全法案に反対した。
政府は個人情報保護に関して個人情報の利用を停止できる仕組みなどがある、などとして対応していると主張している。
菅義偉総理は同日、法案成立に「長年の懸案だった我が国のデジタル化にとって、大きな歩みになると思っている。9月1日の『デジタル庁』発足に向け、しっかり準備をしていきたい」と語った。
また「マイナンバーカードの普及率は(現在)4割」とし「保険証や免許証とも一体化を進める。誰もがデジタル化の恩恵を受けることのできる社会をつくっていきたい」とした。
ただ、国民総背番号制と個人情報の一元的管理により、監視社会につながる危険性が指摘されている。
法案に反対してきた法律家ネットワークは「インターネット、監視カメラ、顔認証システム、GPSシステム等により大量の個人情報が集積される現状において、公権力が個人情報を収集、検索、利用するには、その範囲を必要最小限にするとともに、個別に法的権限を明記し要件を厳格に定める法整備が不可欠」と指摘している。
また「自己のいかなる情報が公権力により収集され利用されているのかについて市民の知る権利が保障されなければならない。行政機関個人情報保護法10条2項1号2号の改正をはじめとして情報公開制度の実効性を高めるとともに、公文書管理のさらなる徹底を図ることが、デジタル化推進の前提」とし「森友・加計学園や南スーダンPKO日報問題等々の教訓から、公文書管理と情報公開制度の充実がデジタル化推進の本来の目的の一つであったにも関わらず、法案はこの点について何も触れていない」とも指摘。
そのうえで「各省庁と地方自治体の情報システムがすべて共通仕様化され、デジタル庁に一元管理される。さらにマイナンバーによって健康情報、税金情報、金融情報、運転免許情報、前科前歴情報などが今後紐づけされて一覧性の高い形で利用が可能となる」と警鐘を鳴らし「市民のセンシティブ情報を含むあらゆる情報を政府が『合法的に』一望監視できる『監視国家』の体制整備を意味する」と警告。
「内閣総理大臣を長とするデジタル庁は内閣情報調査室と密接な関係を持ち、デジタル庁が集約した情報は官邸・内閣情報調査室を介して警察庁・各都道府県警察と共有されることが強く疑われる」とも提起し「監視国家化を禁止又は厳格に規制するための法的措置が不可欠」との緊急声明を出している。こうした懸念を払しょくするための法整備が求められる。(編集担当:森高龍二)