【コラム】日本政治史に禍根残す国論二分の国葬儀

2022年09月26日 07:59

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安倍晋三元総理の国葬儀が国会議論も経ないまま「時の政府の判断のみ」で27日に実施される

 安倍晋三元総理の国葬儀が国会議論も経ないまま「時の政府の判断のみ」で27日に実施される。岸田文雄総理は歴史に残る政治上の汚点を残すこととなった。「国論二分の中で国葬儀」のタイトルが目に浮かぶ。

 小・中学校、高校教科書に「国論を二分、時の政府が国会での審議を経ず、閣議決定のみで国葬儀を強行。国葬儀は都内の日本武道館で2022年9月27日、外国から約700人の参加を含む凡そ4300人(松野博一官房長官22日時点での見込み発表)が参列し、故人に花を手向けた。千代田区九段坂公園では一般献花の列が続いた。一方、国会議事堂前では『憲法違反』の国葬儀反対と抗議集会が催され、平日にもかかわらず大勢が声をあげた」。27日はこうした事態になるかもしれない。

 法的根拠や手続き、歴代総理のほとんどが『内閣・自民党合同葬』の中、今回は岸田内閣の「理由にならない理由による国葬儀」で全額、国費で賄われる。

 岸田総理の説明には閉会中審査の中でも何ら説得力のないものだった。無理ムリ、法的根拠を内閣府設置法に頼った感さえある。それゆえに最後まで理解は広がらず、マスコミ各社の世論調査では「反対」が調査毎に増え、50~75%近くまで反対と答えた。

 国葬儀当日、国会前で開かれる抗議集会には日本共産党の志位和夫委員長も参加すると表明している。今月19日に代々木公園であった国葬反対集会では約1万3000人(主催者発表)が集まり、デモ行進した。同様規模の集会が国会議事堂前で予想される。

 海外のプレスが国葬儀と抗議集会を報じることになる。そこに見えるのは岸田内閣の強硬姿勢、安倍元総理への日本国民の評価が大きく割れていることが浮き彫りになり、割れている要因を改めて伝えることになるだろう。

 「国葬儀」を強行することで、国論が割れる要因が世界に伝えられ、安倍元総理の功績まで評価を下げる結果になるのかもしれない。岸田内閣にとって10月から開会予定の国会は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と閣僚・元閣僚、自民党幹部らとの関りに関する追及、「国葬儀」への集中的な議論だろう。

 安倍氏の非業の死は結果論として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を白昼に晒し、これまで議論されてこなかった「国葬」についても、総理経験者の追悼の在り方を国会で議論するよう提起することとなった。

 「法の下の平等」、思想信条の自由を考えれば、国民の象徴として位置づけられる「天皇」を除き「国葬」は憲法に則さない。やはり総理経験者の追悼は内閣葬か、内閣と与党の合同葬にすることを法定することが妥当ではないのか。世界平和統一家庭連合問題合わせて、安倍氏が最後に提起したとも受け取れる「2つの大きな課題」を、国会で議論し、結論を得るべきだ。

 国葬儀反対世論が大きくなったことで、政府は「国民1人1人に政治的評価や弔意を強制するものではない」と繰り返し説明。強制すると誤解を招かないため、弔意の閣議了解も行わなかった。地方自治体や教育委員会にも協力方の要請の予定もないと明言した。

 全国の自治体、教育委員会、小中学校などの対応は27日当日しっかり見定めたい。国会で「国葬儀」を真摯に議論し、憲法に則したルール、国民が納得できる追悼の在り方を検討いただくことを期待する。(編集担当:森高龍二)