サステナビリティに新しい風。UCCがロタ島の奇跡のコーヒーとアドバイザリー契約を締結

2022年11月03日 08:57

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UCC上島珈琲は、北マリアナ諸島に位置するロタ島のロタ市と、コーヒー栽培の技術指導に関するアドバイザリー契約を締結

 持続可能な社会の実現に向け、日本でも本格的にサステナビリティに取り組む企業が増えてきた。

 2020年10月に当時の菅義偉首相が温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を宣言して以来、日本の民間企業もこぞってサステナビリティを標榜するようになったものの、当初は流行に乗り遅れないためのパフォーマンス合戦的な様相も色濃く見られた。しかし、その本質が浸透するにつれ、サステナビリティの3つの柱である「経済発展」「社会開発」「環境保護」への取り組みが、自社が長期で利益を出し続けるために必要不可欠な活動であることが徐々に理解されてきた。そして昨今では、多くの企業がこの指標を大事な経営目標や経営戦略として捉え、結果を出し始めている。

 例えば、日本の代表的な自動車メーカーの日産は、電気自動車の開発を積極的に推し進めているだけでなく、同社の主要な市場である日本、米国、欧州、中国における2021年度のCO2排出量は企業平均燃費ベースで2000年度に比べ42.5%も改善している。

 また、ユニクロやジーユーなどのアパレル会社を傘下に持つファーストリテイリングでは、「服のチカラを、社会のチカラに。」という声明のもと、同社が考える、事業を支える大切な3つのテーマ「People(人)」「Planet(地球環境)」「Community(地域社会)」における課題を解決するべく、サステナビリティ活動における6つの重点領域を特定し、各領域でコミットメントや目標を掲げ、その達成に向けた活動を行っている。

 日本を代表する珈琲ブランドとして知られるUCC上島珈琲も、積極的にサステナビリティを意識し経営している企業の一つだ。同社では、今年4月に「UCCサステナビリティ指針」を制定し、「農家の方々の生計」や「森林保全」を重要課題のひとつに定め、「人々を豊かにする手助けを」と「自然を豊かにする手助けを」という2つのフレームワークのもと、2030年までに自社ブランドを100%サステナブルなコーヒー調達にすることや、2040年までにカーボンニュートラルの実現などのほか、健康・教育分野にまで及ぶ目標を掲げて活動している。

 そして、その指針に基づく活動の一つとして、9月には北マリアナ諸島に位置するロタ島のロタ市と、コーヒー栽培の技術指導に関するアドバイザリー契約を締結し、原生林で奇跡的に発見されたフォレストコーヒー・ロタブルーコーヒーの商業化に向けて本格始動すると発表している。

 ロタ島は自然豊かで風光明媚な美しい島だが、新型コロナウィルス感染症の拡大によって、主要産業である観光業が大打撃を受けている。一方、ロタ島のコーヒーは2018年6月に現地トライアスロン大会を主催していた日本のKFCトライアスロンクラブによって、深いジャングルの中で奇跡的に発見された。

 調査を依頼されたUCC農事調査室が約1年かけて調査し、さらに現地調査も行ったところ、ロタ島に自生するコーヒーは1930年頃、ハワイ・コナから日本人によって栽培するために持ち込まれたものの、第二次世界大戦末期の1944年に栽培放棄され、70年以上人知れず深いジャングルの中で奇跡的に生き延びてきたコーヒーである可能性が高いこと、また、味覚面に優れ、コーヒーファンにとって大変興味深いものであることが確認されたという。

 そこでUCCは、ロタはコーヒー栽培にとって適な環境であり、また、原生林のコーヒー生態系がエコツーリズムなどの観光資源となりうることなどをロタ市に提案。コーヒーをロタの新たな産業とするべく、約3年にわたるシェード農法の導入支援や環境負荷の少ない加工技術など、サステナビリティに配慮したさまざまな営農支援を行ってきた。そして今回、支援開始以来初となる大規模な収穫を目前に控えて、アドバイザリー契約の締結に至った。具体的には、3年後の2025年の製品化を目指し、ロタ島の新たな産業としての成長を支援し、持続可能なコーヒー産業の実現に貢献していくという。

 サステナビリティといえば、とかくエネルギー削減やCO2削減の施策が目立つが、グローバルな視点での支援や事業創出、森林保全なども、持続可能な社会の実現のためには欠かすことができない非常に重要な項目だ。これに全社一丸となって取り組むUCCの奇跡のコーヒーが話題を呼んで、サステナビリティの新たな可能性が広がることを大いに期待したい。(編集担当:藤原伊織)