拡大を続けてきた国内のコンビニエンスストア業界もここ数年、出店が乱立し飽和状態にあることに加え、長引く消費マインドの冷え込みにより、売上も伸び悩んでいる。激しいシェア争いを繰り広げる大手チェーンは、アジアへの出店に力を注ぐなど、海外へ目を向けている傾向はあるが、国内の展開に関しては、独自の戦略でライバルとの差別化を図ろうとしている。そんなコンビニ業界にとって、最大とも言えるイベントと言えば、やはり間近にせまったクリスマスだろう。大手各社は、9月から既に、今年のクリスマス商戦にむけて、キャンペーン、タイアップ限定商品などを発表しているが、クリスマスまで1ヶ月を切った今、いよいよその戦いが佳境の段階に突入したようだ。
国内最大手のセブン-イレブンでは、「みんなで楽しむ」をコンセプトにした商品を展開。サンタの国(北欧)の言伝え・慣わしをコンセプトに、同店のCMキャラクターである人気アイドルグループのAKB48が商品開発にも関わっている。例えば北欧では、「ユールログ(薪)」をハーブで燻り煙を出し、魔よけや灰で占いをする風習があるという。そのユールログにちなんだ薪・切り株をイメージしたバウムクーヘンのケーキ「ときめく聖夜のデコレーションバウム」(3600円)などを販売している。また、「セブン-イレブンだけにしかない新しい」ケーキをラインナップ。大山栄蔵シェフ監修によるプレミアムケーキ「サンタの国のクリスマスあまおうのプレミアムショートケーキ5号」(5600円)を展開している。例年人気No.1ケーキ「かまくら」も、「かまくら~聖なる夜の贈りもの~(5号相当)」(2300円)とし、クリーム・ババロア・イチゴ等を増量しリニューアルしている。さらに、ママ友会、女子会のようなカジュアルパーティに向けた定番のオードブルに加え、バーニャカウダ、寿司セット等の新しいメニューが登場。人気アイドルのブランドイメージに加え、商品のバリエーションの豊富さで勝負に挑む。
一方、ローソンは、オリジナルスイーツブランド「Uchi Cafe SWEETS」の大ヒット商品「プレミアムロールケーキ」と「ぎゅっとクリームチーズ」を、みんなで楽しめるスペシャルバージョンにして対抗。また、苺のショートケーキやティラミスなどの定番ケーキだけではなく、数量限定の10000円のケーキや人気アニメであるエヴァンゲリオン、魔法少女まどかマギカとのコラボケーキ、さらにクリスマスパーティーを飾るパーティーフーズなど、話題性だけでなく、商品のクオリティにもこだわった独自のスタイルを打ち出している。
スイーツのコンセプト商品に関しては定評があるファミリーマートは、「レ・アントルメ国立」監修の商品を含めたケーキを20アイテム、アイスケーキ等7アイテムのほか、犬猫用ケーキやジューシーに焼き上げた「国産若鶏の丸焼き」(2580円)、「シーフード&テリヤキチキンのピザ」(1500円)などの惣菜メニュー、サンドイッチなどのパーティーメニューを13アイテム、シャンパンやスパークリングワインなどのお酒8アイテムも取り揃えている。なかでもキャラクターフィギュア付きクリスマスケーキ「初音ミク クリスマス♪ピアノケーキ」(3900円)と「TIGER & BUNNY ワイルドタイガークリスマスケーキ」(3900円、予約受付11月26日まで)は、話題を呼んでいる。
組織再編し、トップ3に勝負を挑むサークルKサンクスは、オリジナルデザート「シェリエドルチェ」シリーズのケーキ11アイテムをはじめ、合計23アイテムのケーキを取り揃え、「本格的な美味しさ」と「バラエティ感」を追求している。例年人気の定番商品に加え、今年は新たに「6種のフルーツタルト5号」や「シューケーキミックスベリー6号」などを用意。また、冷たいアイスクリームとサクサクのクッキータルトの食感が同時に楽しめる「クッキータルト」を2アイテム加え、アイスデザートは7アイテム、パーティーメニューは14アイテムを展開している。さらに、JAL エグゼクティブクラスでサービスされている本格的なシャンパンから、コストパフォーマンスに優れたスパークリングワイン、ケーキと一緒に飲みたい甘口ワイン、人気の低アルコール微発泡ワインなど6アイテムもラインナップに加えている。
「年末の特別なイベントであるクリスマスをコンビニ商品で済ますというのは少し抵抗が」という声が聞かれたのもひと昔前の話。コンビニ商品の質は年々向上し、スイーツなどは特に舌の肥えた人でも満足度が高い完成度となっているようだ。また、多くの消費者のライフスタイルに欠かせない存在となったコンビニは、クリスマスというイベントにはあまり興味がなさそうな層の利用度も高いだけに、毎年激しいシェア争いを繰り広げる大手各社にとっては、このクリスマスキャンペーンは、通期の業績を左右する大きなイベントであることは間違いないと言える。各社が独自のアイデアを打ち出し、様々なコンセプト商品を発表しているが、それだけでは決め手に欠けるようにも思われる。やはり今年も、人気のキャラクターや、一般消費者にも認知度の高い著名人やお店などとコラボレーションし、その名前とブランドイメージに頼るという戦略が前面に出ており、他社との差別化を図るための新しい切り口というのが、どこからも見受けることができなかったという印象が残る。