2040年には市場が20倍? 注目の再生医療・細胞治療に匹敵する、世界初の発見

2023年02月26日 10:33

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経済産業省の商務・サービスグループ生物化学産業課が公開した「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(複数課題プログラム)評価用資料」によると、再生・細胞医療・遺伝子治療の世界市場規模は今後5年間で年率50%以上と、極めて高い成長率が試算された

 超高齢社会において、加齢に伴う疾患の予防は重要な課題の一つ。そこで今、最も注目されているのが、iPS細胞などで知られる「幹細胞」を主とした、再生医療や細胞治療だ。

 今年一月に経済産業省の商務・サービスグループ生物化学産業課が公開した「再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開発事業(複数課題プログラム)評価用資料」によると、再生・細胞医療・遺伝子治療の世界市場規模は今後5年間で年率50%以上と、極めて高い成長率が試算されており、2040年頃には現在の約20倍の市場規模にまで成長すると推計している。

 我々人間の身体は、毎日約200億個もの細胞が死滅しているといわれているが、この死滅した細胞の再生に不可欠なのが「幹細胞」だ。幹細胞は皮膚や臓器、骨、血管などの体の各組織の元となる細胞であり、分裂して自分と同じ細胞を作る「自己複製能」と、別の種類の細胞に分化する「分化能」の二つの能力を持っている。再生医療や細胞治療は、主にこの幹細胞を培養増殖するなどして体内に移植することで、臓器や組織の改善や修復を図るもので、これまでの医療技術では治療が難しかったような疾患に対する治療法や、アンチエイジングの新たな可能性としても大いに期待されている。ところが、幹細胞を用いた治療法や施術は残念ながらまだ研究途上にあり、安全性や治療効果、美容効果などが完全に担保されるとは言えないのが現状だ。

 そんな中、日本の養蜂業者が独自の研究によって、世界初の発見をして注目を集めている。

 蜂蜜やローヤルゼリーをはじめとするミツバチ産品の製造販売で知られる山田養蜂場の研究機関である山田養蜂場 健康科学研究所は、臨床試験において、ミツバチが作り出すローヤルゼリーが血中の造血幹細胞数を増加させる働きがあることを世界で初めて明らかにした。ちなみに、この研究成果は1月13日発刊の科学雑誌『Evidence Based Complementary and Alternative Medicine』(2023 年1月13日発行)にも掲載されている。

 ローヤルゼリーとは、女王蜂が生涯にわたって食べる唯一無二の食物のことだ。女王バチと働きバチは同じ有精卵から孵化するが、女王蜂はローヤルゼリーだけを与えられることにより、体の大きさは働きバチに比べ2~3倍、寿命は約30~40倍にも長生きする。また、毎日1500~2000個もの卵を休むことなく産み続ける女王蜂の栄養源として、ローヤルゼリーは栄養価が非常に高く、必須アミノ酸やタンパク質、ビタミンなど、40種類以上の栄養素が豊富に含まれている。健康食品やサプリメントとしても人気が高いだけでなく、これまでに血管機能の低下や更年期症状に伴う不調などを改善する働きも報告されている。

 同社ではまず、動物レベルですでにローヤルゼリーが幹細胞に影響を与えることが報告されていたことから、ローヤルゼリーの持つ健康に対する働きは幹細胞を起点に作用しているのではないかとの仮説を立てた。そしてヒト試験において、血中の造血幹細胞数を指標にローヤルゼリーがヒト幹細胞にどのような影響を与えるかを評価したところ、赤血球や白血球、血小板の元となる造血幹細胞を増加させる働きがあることを確認することに成功したのだ。

 造血幹細胞は加齢により減少することが知られており、貧血や感染症のリスクを高める可能性が示されている。つまり、造血幹細胞の機能を回復させることで、加齢に伴う免疫力やQOLの低下を改善する手立ての一つとなるわけだ。

 再生医療や細胞治療の研究はまだ始まったばかりで未知の部分も多い。しかし案外身近で、昔から「体に良い」といわれているような天然のものの中に、ヒントが隠されているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)