ペットの高齢化に伴い、ペット医療への需要も高まる。再生医療など最先端で高額になる医療を望む飼い主も増加するが、ペット医療は自由度も高く、安全などに対する疑問は残る。今後さらなる医療技術の発展により実用化は進むと考えられるが、倫理面など課題がある。
犬や猫などペットの病気や怪我を治療するにあたっては、人と違って公的な医療保険がない。治療費が高額になっても全額自費での支払いが基本となる。負担額を軽減するために民間のペット保険に加入する飼い主も増加しており、掛け金に応じて一般的なペットの医療費用が補償される。
そのようにペットと人を同じように扱う傾向にあるなかで、ペットにも再生医療など最先端の医療を受けさせたいという飼い主も増加し、すでに実用化が進んでいる。
再生医療では、取り出した細胞を培養することで組織を作製して再び体内に戻すという治療が行われる。治りにくい骨折や椎間板ヘルニアなどに効果が期待できるという。
しかし、培養した細胞を販売することはまだ認められていないため、実際に治療にあたる獣医師が培養キットを用いて組織を作る必要がある。品質や技術などの点において獣医師ごとにばらつきがあり、再生医療を用いた治療をする特別な資格が制定されているわけではない。
椎間板ヘルニアは犬に多いといわれるが、再生医療が積極的に適用されるようになれば治療の選択肢も増えることが考えられる。とはいえ、日本獣医再生医療学会によれば再生医療は、重病とされる場合に適用が限定されている。
ペットの再生医療に関するガイドラインには対象疾患に関しても書かれているものの、ガイドラインに則った治療を行わなかったとしても罰則はなく、再生医療に関する研究も十分とは言い難いという。また、ペット医療は人間の医療と異なり診療費や医薬品代の規定も明確ではない。安全面だけでなく費用の面でも獣医師の裁量次第ということになるのだ。
現時点では不安要素を含むものではあるが、2020年には組織として培養された細胞を動物用医薬品の扱いで販売する見通しが立っているという。一定の基準を満たした品質の組織が流通し、獣医師にとっては再生治療への敷居が低くなるであろう。
そうなれば、どのラインを重病とみなして再生医療を施すかという倫理的な問題がよりいっそう問われる。治療に対する飼い主の希望や費用との兼ね合いなど新たな問題も生じることが考えられるだろう。(編集担当:久保田雄城)