国土交通省は7月10日、令和5年建設事業関係功労者等国土交通大臣表彰の授賞式を東京 霞が関の国土交通省10階共用大会議室にて執り行った。同表彰は建設事業関係の功労者及び優良団体に対して贈られるもので、今回は、総合建設業関係や専門工事業関係、道路事業関係、住宅・建築事業関係など、計10部門から230名の受賞者と優良団体2団体が選出された。本表彰は毎年行われているものだが、今年はいよいよアフターコロナ時代に向かう最中であるだけに、受賞者たちにも格別の思いが込み上げているのではないだろうか。
コロナ禍以前の建設業界は右肩上がりで需要が伸びていたが、ウイルスの蔓延とともに状況は一転。観光業や飲食業などと同様、建築関連業者の多くが途端に窮地に立たされた。単に経営面で負担が増大したというだけでなく、資材の高騰や納期遅れなども相次ぎ、人材不足のさらなる深刻化も招いた。また、リモートワークなど、自粛生活の影響で居住環境にも大きな変化が起こり、顧客ニーズへの対応にも追われる羽目になった。本表彰の受賞者は、そんな激動の中でも建築業界の存続と発展、さらには社会貢献に尽力してきたことが公に認められたようなものだ。受賞者の中には企業経営者の名前が多いが、その会社で働く従業員たちもきっと喜び、励みになっていることだろう。
例えば、住宅・建築事業関係部門で受賞した宮沢俊哉氏もそのひとりだ。宮沢氏は、ここ数年で大躍進を遂げている住宅メーカー株式会社AQgroup(旧アキュラホーム)の代表取締役社長。三代続く大工の家に生まれた宮沢氏は独立起業後も、大工時代の経験を活かし、業界の発展に尽力してきた。創業当初から「適正価格」で「高品質」な住まいの提供することにこだわり、大手メーカーにも引けを取らないモノづくりを徹底してきた。また、全国の中小工務店のネットワーク「ジャーブネット」の主宰を務め、住宅建築合理化ノウハウ「アキュラシステム」を開発するなど、同業者との連携を図る新しい取り組みも次々と成功させている。近年では間伐材を利用した世界初のカンナ削りの「木のストロー」を開発し、G20大阪サミットなどでも採用されて海外からも注目を集めている。
また、総合建設業関係部門で受賞した河江芳久氏は、株式会社福田道路の元代表取締役社長であり、一般社団法人日本道路建設業協会副会長、さらには新潟県アスファルト合材協会も務めた人物だ。2011年に発生した東日本大震災の復興では、資材や輸送車両が不足する中、「高品質で安定的に提供し続けなければならない」と手腕を振るった。福田道路のホームページでも今回の河江氏の受賞を称える記事が掲載されるなど、社長退任後も会社や業界への影響力の大きな人物であることが伺える。
他の業界と同じく、労働者人口の不足が深刻な課題となっている建設業界。優れた先人、先輩たちの功績が認められることは、後進にとっても大きな励みになることだろう。また、受賞された方々には、これからも建設業界人の指針としてますます活躍していただきたいものだ。(編集担当:藤原伊織)