中大木造建築の普及を加速する4事業。カーボンニュートラルなまちづくりへ

2023年11月12日 09:17

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カーボンニュートラルな社会と循環型地域社会の実現のため、建築物の木造化が進められている

 カーボンニュートラルな社会と循環型地域社会の実現のため、建築物の木造化が進められている。政府でも、令和3年10月1日には脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律、通称「都市(まち)の木造化推進法」の施行等。様々な施策を講じて推進しているものの、3階を超える規模の中層建築物等については、依然として木造化率が低い水準で推移しているのが現状だ。

 3階を超える規模の木造建築の普及においては、コストや施工性等で高い競争力を持ち、地域の設計者、及び建設会社や工務店等の施工者間で広く展開できる構法と、それを実現するための部材供給等の枠組みを整備していくことが必要といわれている。

 そんな中、(公財)日本住宅・木材技術センターと木構造振興(株)では、国土交通省・林野庁の連携のもと、木質材料(製材、集成材、LVL、CLT等)を用いた構法及びそれを実装するための部材供給等の枠組みに関する提案を「中大木造建築普及加速化プロジェクト事業」として7月から募集を開始し、有識者会議による審査を経て、10月18日に4件を採択した。

 採択されたのは、株式会社AQ Groupと(一社)中大規模木造プレカット技術協会が共同で実施する「在来軸組構法の4階建て木造への拡張PJ」、有限会社ビルディングランドスケープによる「中大規模木造用標準ブレース金物を用いた中層都市木造モデル」、GIR 研究会による「GIR接合による4階建て、木造事務所標準モデル」、Reegle 株式会社 コレモク推進室の「みんなのヒノキビルプロジェクト」の4件だ。

 中でも注目されるのは、AQ Groupの取り組みだ。同社は近年、とくに中規模木造建築の普及に向けた取り組みを強化しており、業界に先駆けて「5階建て木造ビルの実物大耐震実験」などの実証実験を行ったり、神奈川県の川崎展示場に「5階建て純木造モデルハウス」を展開したりしており、これをプロトタイプとした「普及型純木造ビル」によって日本の街並みに木造建築を復興する「Re:Tree プロジェクト」を推進している。さらには2024年に完成予定の新社屋も「8階建て純木造ビル」で建設中と非常に積極的だ。

 同社は、今回採択された「在来軸組構法の4階建て木造への拡張PJ」でも、これらのプロトタイプ事業で培った技術を活用し展開していくとしており、同プロジェクトを通して、地域のゼネコンや工務店・大工などでも設計施工可能な「普及型純木造ビル」のノウハウが広がることが期待されている。

 木造ビルの普及は、カーボンニュートラルで地球温暖化の抑制になるだけでなく、建物自体の重量がRC造や鉄骨造よりも軽いため、それを支える地盤改良工事、基礎工事の費用などが安く抑えられたり、部材そのものの断熱性が高いお陰で光熱費を押さえられたりとメリットが多い。また、日本の林業活性化や山の荒廃防止にもつながる。採択された事業などをきっかけに、日本の気候風土にも合った木造ビルがもっと広く普及することを期待したい。(編集担当:藤原伊織)