新一万円札の渋沢栄一も推奨していた企業価値を上げる地域貢献CSRとは

2023年11月12日 09:21

画・「2次産業て_働く人か_多いエリアほと_出生率か_高くなる 」出生率に関する驚きのテ_ータとは

CSRへの姿勢や規模、内容などは企業によって様々だが、いずれも経済、環境、社会の3つに配慮し、持続可能性を高める経営を行うことが大きな共通点ではないだろうか

環境問題の深刻化や、インターネットの発展による口コミの影響拡大、企業のグローバル化など、社会の様々な変化を背景に、企業の経営と価値は今、営利を追求するだけでなく、いかに社会に貢献しているかが重要視されるようになってきている。また、企業活動に向けられる社会と個人の目がますます厳しくなる一方、「企業の社会的責任(CSR)」(以下CSR)活動への期待も高まっている中、大企業はもちろん、中小企業といえどもCSRを無視することはできない時代だ。

 国際標準化機構(ISO)では、あらゆる種類の組織を対象とした社会的責任に関する国際規格「ISO26000」を策定しているが、そのように四角四面に考えなくても、実はこのような考え方は「売り手よし、買い手よし、世間よし」という言葉で広く知られる「近江商人の三方よし」の経営理念に代表されるように、日本人には古くから根付いているものだ。また、2024年7月から新一万円札の顔になる日本を代表する実業家・渋沢栄一の著書「論語と算盤」においても、理想と利益追求のいずれに偏っても社会や事業を持続させていくことは難しく、道義を伴った利益追求こそが重要であると記されている。これは現代社会におけるSDGs経営の考え方そのもので、CSRの取り組みは、ステークホルダーの信頼性を高め、経営を発展させる一助にもなる

 CSRへの姿勢や規模、内容などは企業によって様々だが、いずれも経済、環境、社会の3つに配慮し、持続可能性を高める経営を行うことが大きな共通点ではないだろうか。例えば、地域に貢献する活動もその一つだ。そこに費やす金額の大きさだけで図るのではなく、地域の繋がりをどれだけ深化させ、地域社会の活性化に貢献する活動なのかが大切だ。

 例えば、富士通では、活動拠点を神奈川県川崎市に置くWリーグ所属の社会人女子バスケットボールチーム富士通レッドウェーブの選手らとともに2020年度から継続して実施している「バリアフリー街歩き」というCSR活動がある。同活動には富士通社員はもちろん、川崎市や中原区の職員らも参加し、武蔵中原駅~とどろきアリーナまでの区間を歩きながら、歩道の幅の確認、スロープの傾斜度合いの測定、多機能トイレの機能などを確認し、車いすやベビーカーでも安全に通行できるルートを地図上に明示することで、誰もが安心してスポーツを楽しめる社会の実現を目指している。

 また、灘の老舗酒蔵・白鶴酒造では毎年4月と10月に「酒蔵開放」を開催しており、今年の10月も地元の住民らを中心に約3000名の来場で賑わった。当日は、同社の日本酒などの試飲や4年ぶりに再開した工場見学などのほか、地元のカネテツデリカフーズや地域の飲食店の屋台や、屋外ステージでの音楽ライブやジャグリングショー、酒造り唄の披露、さらには最高峰の酒米として知られる山田錦の産地「三木市」の新鮮野菜の販売なども行われ、大いに盛り上がった。地域のつながりが希薄になる中、こういった昔ながらの地元のイベント、家族で出かけられる機会を設けることも立派な社会貢献活動といえるのではないだろうか。しかも、白鶴酒造では、この酒蔵開放イベント当日の有料試飲の売上の一部を神戸市の認定NPO法人に寄付しており、この寄付金がある程度まとまった金額になった時点で、地元の市民活動の助成金として活用される計画だという。大企業が行う数億円規模のCSR活動などと比べると地味に見えてしまうかもしれないが、地域の繋がりを活性化し、かつ利益を循環する、理想的な活動といえるのではないだろうか。

 他にも、江崎グリコが世界に一台しかないワゴン車で全国の子どもたちに「お菓子を通して笑顔を届ける」ために取り組んでいる「グリコワゴン活動」や、鉄の生産工程で発生する副産物である鉄鋼スラグを肥料として再利用し、福島県相馬地域において東日本大震災に伴う津波被害農地の除塩対策に取り組む東京農業大学にこの鉄鋼スラグ肥料を無償提供して、水田の稲作に役立ててもらうという取組みを行っている日本製鉄など、自社の事業や特長、強みなどを活かした地域貢献活動を行う企業も増えてきている。

 日本人はとかく奥ゆかしいところがあるので、なかなかこういった活動を大々的にPRする企業は少ないが、調べてみると中小企業でも、積極的に地域貢献に取り組んでいる会社は多い。これからの時代、そういった活動の一つ一つが、企業の価値や評価を高める基準になり、日本経済を底上げする大きな力となっていくのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)