東京オリンピック招致のため、IOC(国際オリンピック委員会)委員105人に官房機密費を使い1冊20万円のアルバムを贈ったと自民党五輪招致本部長だった石川県の馳浩知事が17日、都内での講演で明かした。
問題は2つ、年間14億円ともいわれる官房機密費がアルバム制作費にあてられたのか。IOC委員への贈答がIOC倫理規定に違反する行為にならないか。まず、事実として馳氏が語ったことが行われたのか、政府は国会で、国民に対して説明責任を果たすべきだ。
馳氏は翌日になって発言を全面撤回した。しかし馳氏がアップしている「はせ浩オフィシャルブログ・はせ日記・2013年4月01日」には「9時過ぎ、党本部の5階、五輪招致本部長室入り。鮫島秘書といっしょに、あれやこれやと、海外出張の準備。10時半にはフォトキシモトの岸本社長と松原専務がお見えになり、打ち合わせ。IOCとアーカイブ契約を果たした岸本さん。その大切な写真を拝見し、あらためて、オリンピック精神とは何かを納得。スポーツを通じて世界平和を!」。
「15時20分、官邸へ。菅官房長官に、五輪招致本部の活動方針を報告し、ご理解いただく。駐日大使館ごあいさつ訪問、国際会議出席、国際的なロビー活動、ともだち作戦、想い出アルバム作戦・・・・などなど」と記述しており、『想い出アルバム』が作戦としてあがっている。過去の記録は消せない。
記述は「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いします!と発破をかけられる」とも記している。
馳知事は講演の翌日に五輪招致に関する部分は「私自身の事実誤認もある発言で全面的に撤回をする」と撤回した。「わたしは自民党の五輪招致本部長を拝命し、IOCの規約・憲章を踏まえて取り組んでいた。IOCの倫理規定をきちんと把握したうえで招致活動全般にわたって取り組んできた」と会見で強調した。
しかし、どの点が事実誤認発言だったか一切触れず。「五輪招致にかかわる問題で、私自身の事実誤認に基づく発言なので全面撤回します」とただただ繰り返すのみだった。
17日の講演では「当時、総理だった安倍晋三さんから『国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ。馳、金はいくらでも出す、官房機密費もあるから』。それで、IOC委員のアルバムを作ったんですよ。1冊20万円するんですよ」と発言していた。
馳知事が文科大臣だった時の記者会見のやりとりを含め、馳氏の性格から、なかったことをあったように語る人と思えない。正義感も強い人だと思っている。アルバム制作に官房機密費があてられたのか。アルバムを贈答したのか。事実を明らかにしてほしい。
11月21日の衆院予算委員会で立憲民主党の本庄知史(さとし)議員の質問に、松野博一官房長官は「内閣官房報償費(官房機密費)は国の機密保持上、その使途など明らかにすることが適当でない性格の経費として使用されてきており、個別具体的な使途に対する質問には答えを差し控えさせていただいている」などと、機密費をいいことに答弁を逃げた。
本庄議員は「(官房機密費でIOC委員のアルバムを制作し各委員に贈ったことが)事実なら贈答を禁じているIOCの倫理規定違反の可能性すらある。違法行為のために官房機密費を使うということまで許容されていないと思う」と指摘し、回答を求めた。
「写真集が1冊でも出てくれば大変なことになると思う」とも。動かぬ証拠だ。これが出る前に事実関係をつまびらかにする方がよいのは確かだ。安倍政権以降、これまでの政府への不信感はさらに強くなるだろう。支持率の更なる低下になるだろう。
SNSでは「自民党招致推進本部長だった当人による証言だから信用できる。このあと慌てて撤回したから更に信用できる」「IOC副会長が『もらったかもしれないが思い出せない』と発言したとする報道」などなど、今後の招致活動にも影響する問題で(贈収賄事件など汚職の温床になった五輪だけに今後は招致すべきでないとの声も多いが)まずは、事実関係を明らかにする必要がある。
立憲民主党の蓮舫参院議員は「不適切、撤回で済む話ではない」とXで発信。馳氏が国会で説明すること、松野官房長官も官房機密費があてられたのか、一般論で逃げず、この点に限ってでも明らかにすべき。本庄氏の指摘通り、違法行為のために官房機密費を使うということまでは許容されていない。(編集担当:森高龍二)