企業のブランディング活動の重要性とは

2011年10月11日 11:00

 2008年9月、米国のリーマン・ブラザーズが破綻したことが火種となり、世界的な金融危機へと広がった、あの「リーマン・ショック」からもう3年。しかしギリシャの経済危機などヨーロッパでは金融不安がさらに深刻化している。日本も3月11日に起こった東日本大震災の影響も加わり、長引く不況から出口を見いだせないままだ。国内総生産(GDP)も「リーマン・ショック」直後の2008年10月から12月期、2009年1月から3月期はマイナス10%を超え、当時、戦後最大の危機的な落ち込みとなっていた。現在は若干の上向き傾向にあるが、リーマン・ショック以前の状況には戻っていない。

 国内の消費動向も、2008年9月以降、一般消費者は製品・サービスへのこだわりより、低価格を重視するようになっていると考えられていた。しかし、経済産業省が平成22年に発表した「消費者購買動向調査」における「消費者が商品やサービスに何を求めているか」という消費に対する意識及び動向に対する調査によると、「信頼できる」と「安心できる」が1位、2位となり「低価格」は3番目となった。この結果から見ても、実際に日本の消費者は不況下でも、「低価格」よりも「信頼できる」「安心できる」を重視していることがわかる。また、その他の回答にも「安全」「日本製」「長く愛せる」が上位になっていた。

 上記の結果から、商品やサービスのアピールポイントを企業側がしっかりと生活者、消費者に伝えることができないと、ただ安いだけでは購買意欲に繋がらないと判断できるだろう。そうなると、企業が存続し成長していくためには、どれだけ的確に自社の製品・サービスを強くするための戦略でもあるブランディング活動を行うかが大きな鍵を握ってくることになる。

 そのような情勢の中、10月1日より、ブランドづくりのアドバイスを行うプロ集団「ブランドアカデミー”傳”」という組織が立ち上がった。創設者は元シャープブランド戦略室長である石井彰氏と元村田製作所広報部長である大島幸男氏。この2人の人脈を背景に、錚錚たるメンバーが顔を揃えている。

 「ブランドアカデミー”傳”」の最大の特徴としては、シャープや村田製作所のブランド成功事例づくりを担ったリーダーを中核に、多くの企業のブランド構築の実務担当者や専門家が協力メンバーとして結集しているため、現場サイドに立った実践的なアドバイスができることが挙げられる。例えば、ブランディング活動を成功させるために「どうすれば社内を巻き込めるか」という、自らの体験を通して熟知しているメンバーたちならではのアドバイスには、単なる理論ではなく、ブランディングの実務経験に基づき、痒いところに手が届く、リアルな戦略が見えてくる。また、実務経験を通じて、企業家、ビジネスマン、大学の研究者、マスコミ、広告代理店等との豊富な人脈があり、多方面の考えから指導できることなどが大きな特徴と言える。

 「ブランドアカデミー”傳”」代表の石井彰氏は取材に対し、「我々は、現役時代から企業という垣根を越え、それぞれの悩みを相談しあい切磋琢磨してきた同志たちが、講演会、勉強会あるいは懇親会など、色々な場を通じて出会い、そして集結したグループです。自分達の経験を後輩達に伝えていくことで、仕事上の悩みの解決に役立ちたい、また、それぞれの得意分野を結集すればもっと総合力を発揮することできるのではないか、と考えております」と語ってくれた。

 「良いものを作りさえすれば」「良いものを売りさえすれば」「良心的な経営さえすれば」、特別にアピールしなくとも高い評価が得られるという時代はすでに終わった。企業の成長発展のためには、意識的にブランド力を高めることで、社会的評価と信用を得て、社員に活気を与え、さらに優良な顧客や優れた人材を確保していくことが必要だ。ブランディング活動とは、企業の利益を増やし、価値を高め、その相乗効果が企業イメージの向上へとつなげていくための最も有効的な手段であることを、今、日本の企業はもう一度改めて考えてみる時期にさしかかっているのではないだろうか。「ブランドアカデミー”傳”」のように「強い日本」を築き上げてきたプロ集団が、もがき続けている日本企業、あるいは日本経済を蘇らせるひとつの道筋を示してくれることを期待したい。