近年、特定の組織、個人を狙ったサイバー攻撃、特に標的型攻撃が増加し、官公庁や企業の機密情報や個人情報が盗み出されるといった被害が発生している。攻撃手法も高度化し、攻撃を受けたこと自体を発見することが困難になっており、対策が遅れて被害が深刻化する傾向になるという。
そのような中、NEC<6701>は、サイバー攻撃対策などサイバーセキュリティ事業の強化のため、セキュリティ脆弱性診断等において業界トップクラスの技術を有するサイバーディフェンス研究所(伊藤忠商事 100%子会社)の全株式を取得する契約を締結。今後、3月1日に取得手続きが完了し、同社はNECの100%子会社となる予定となっている。
サイバーディフェンス研究所は、セキュリティ脆弱性診断やサイバー演習教育サービス等を提供するサイバーセキュリティに特化したプロフェッショナル集団。既製のツールや定型的な対策に依存せず、ネットワーク、セキュリティに関する様々な専門分野に精通した技術者を有しているのが特長だ。また同社は、海外企業とも提携し、高度な技術力に基づくサービスの提供により豊富な実績も持っている。
また、世界トップレベルのパブリックセーフティやクラウド、ビッグデータなどのソリューションをもつNECは、これまで、サイバー攻撃への対策を支援するため、標的型攻撃の脅威を可視化する様々なソリューションを提供。これらに加え、2012年11月に、官公庁や企業などにおけるサイバー攻撃対策の導入・運用を支援する組織「サイバーセキュリティ・ファクトリー」を設置している。同組織は、サイバーディフェンス研究所をはじめとした国内セキュリティ専門会社と協力して新しいサイバー攻撃対策ソリューションの開発および、サイバー攻撃対策システムの導入から運用支援までのサービスパッケージを提供しているという。さらに、2012年12月には、国際刑事警察機構(インターポール)と提携し、複雑で高度化するサイバー犯罪などを調査・分析し、インターポール加盟各国へ提供する最先端のサイバーセキュリティ対策の開発にも取り組んでいる。
NECは今回の株式取得で、同ソリューションに、サイバーディフェンス研究所が有する、日本に数少ないサイバーセキュリティのプロフェッショナルな人材による高度な技術力が加わることとなる。
日々攻撃の脅威が増し、標的も多様化しているサイバー攻撃。官公庁のみならず、電力、金融機関、通信事業者などの重要インフラを提供する企業へもサイバーセキュリティ対策には力を注いでいるが、コンピュータの進化とともに、ハッカーの頭脳も進化していき、いたちごっこのような状態が続いている。今回の提携が、終わりなき戦いに終止符を打つ伏線となることに期待したい。(編集担当:宮園奈美)