塩野義決算、過去最高益を更新 感染症から総合創薬企業へ拡大加速

2026年05月13日 11:10

今回のニュースのポイント

塩野義製薬の2026年3月期決算は、売上収益が前期比14.0%増の499,677百万円、営業利益が6.5%増の166,725百万円となり、4期連続で過去最高を更新しました。背景には、HIV関連ロイヤリティー収入の安定成長に加え、鳥居薬品の子会社化やJT医薬事業の取得、米国Akros社の買収といった戦略的M&Aによる事業拡大があります。同社は今、感染症領域への依存リスクを低減し、「グローバル総合創薬企業」への転換を加速させています。

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 2026年3月期の業績は、売上収益499,677百万円(前期比14.0%増)、営業利益166,725百万円(同6.5%増)と、すべての利益指標で過去最高を更新しました。売上総利益率は約83.5%という極めて高い水準を維持しており、製薬業界屈指の高収益体質が鮮明になっています。

 最高益の立役者は、グローバル市場での安定した収益源と、相次ぐ大型M&Aです。海外では、ViiV Healthcare社からのHIV関連ロイヤリティー収入が、長時間作用型製剤の成長などにより261,310百万円(前期比8.7%増)と伸長しました。国内では、2025年9月に鳥居薬品を連結子会社化して皮膚・透析領域を強化したほか、12月にはJTの医薬事業を承継しました。これにより、低分子創薬における強力な研究基盤と販売権を獲得し、国内医療用医薬品の売上高を123,500百万円(同25.0%増)と大きく押し上げました。

 一方で、新型コロナ治療薬「ゾコーバ」などの国内急性呼吸器感染症薬は、流行の沈静化に伴い売上高33,837百万円(同34.8%減)と減少しました。同社はこの「ゾコーバ後」を見据え、感染症以外の「QOL改善領域」の育成を急いでいます。発売1年を迎えた不眠症治療薬「クービビック」は投薬期間制限の解除により売上が急伸したほか、2026年3月には即効性が期待される新規うつ病治療薬「ザスベイ」を発売しました。認知症や希少疾患のパイプライン拡充も進めています。

 さらに、JT医薬事業の統合によって、AIや量子コンピューターを活用した最先端の創薬プラットフォームを獲得したことも大きな転換点です。経験豊富な研究職と最新テクノロジーを融合させることで、次世代の低分子創薬における成功率向上と期間短縮を狙います。

 米国市場においては、田辺三菱製薬グループの田辺ファーマ株式会社からALS治療薬「Radicava(ラジカット)」のグローバル権利を取得し、希少疾患事業の柱として立ち上げるなど、海外展開の多角化も進めています。

 2027年3月期の通期予想では、売上収益700,000百万円(前期比40.1%増)、営業利益220,000百万円(同32.0%増)と、売上および営業利益において5期連続の増収増益という計画を掲げました。M&Aに伴うのれんの償却や研究開発費の増加を、新薬の成長と統合シナジーによる大幅な増収でカバーする方針です。

 感染症依存リスクの低減を図り、多領域・多地域に収益源を持つ総合創薬企業へ。塩野義が進めるこの大規模な構造転換は、特許切れ問題や創薬コスト高騰に直面する日本の製薬業界において、一つの成功モデルとなる可能性があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)