経団連、裁量労働制拡大を提言 AI時代見据え労働時間法制見直し

2026年05月14日 06:30

画・リモートワーク意識も世代格差。40歳以下「リモート希望」半数超え。40歳以上では逆転、「通勤希望」増。

経団連が裁量労働制の拡充を求める提言を公表。生成AI普及や低い労働生産性を背景に、労働時間ではなく成果を重視した法制への転換を提言

今回のニュースのポイント

経団連は、生成AIの普及や生産性向上を背景に裁量労働制の拡充を求める提言を公表しました。G7で最下位が続く労働生産性の改善に向け、現行の労働時間規制から、創造的業務に適した柔軟で自律的な働き方への転換を主張。プロジェクト型業務等の追加を提案しつつ、健康確保や濫用防止策の徹底も併せて提示しています。

本文
 一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は、わが国が国際競争力を維持・強化し「成長と分配の好循環」を定着させるためには、働き手一人ひとりが生産性を高めやすい環境整備が不可欠であるとして、提言「裁量労働制の拡充を求める―柔軟で自律的な働き方をさらに広げるために―」をまとめました。

 背景にあるのは、日本の低い労働生産性と急速な生成AIの普及です。2024年の日本の一人当たり労働生産性はOECD加盟38カ国中29位で、主要先進7カ国(G7)では最下位の状況が続いています。生産年齢人口の減少により労働投入量の大幅な増加が期待できないなか、働き手がデジタル技術を活用しながら創造的に働けるよう、労働時間法制の抜本的な見直しが必要であると説いています。

 現行の労働基準法は約80年前に制定されており、いまだに工場労働者を想定した「労働時間に比例した処遇」を前提としています。提言では、この仕組みが時間と成果が必ずしも比例しない「創造型業務」の足かせになっていると指摘し、労働生産性の向上につながる環境整備の必要性を強調しました。

 現在、裁量労働制には「専門業務型(20業務)」と「企画業務型(経営企画等)」の2種類がありますが、適用率はそれぞれ1.1%と0.3%と極めて低い水準にとどまっています。経団連はこの普及を阻んでいる最大の要因として、対象業務の範囲が狭く、非対象業務が一部でも混在すると適用できなくなる現行制度の厳格さを挙げました。

 拡充すべき具体的な業務として、まず「裁量労働制の対象とならない業務が一部混在する業務」を挙げています。新システムの導入といったプロジェクト型業務において、メインの企画業務に付随してシステム保守などの業務を行う場合でも、実態に即して適用を認めるべきとしています。次に「課題解決型提案業務」への適用も要望しました。特定の顧客向けに商品・サービスの企画から開発・提案までを一貫して行う業務を想定しており、現行法では自社の事業運営に関する企画のみが対象ですが、他社の事業運営に関わる提案業務も含むよう求めています。さらに「シェアードサービス業務」についても、グループ会社の人事や経営に関する企画・分析を行う労働者を対象に追加することを提案しました。

 提言では、フレックスタイム制との違いについても言及しています。フレックスタイム制が働く時間の柔軟性にとどまるのに対し、裁量労働制は働く時間と仕事の進め方の両方に裁量がある点が決定的であり、短時間で成果を出した労働者が正当に報われる成果を重視した処遇を実現しやすい制度であると位置づけました。

 一方で、根強い「働かせ放題」との批判や長時間労働への懸念に対しても反論と対策を提示しています。厚生労働省の調査分析を引き合いに出し、適用労働者の約8割が制度適用に満足していることや、非適用労働者よりも年収が約13%高いというデータを紹介しました。また、適切運用のための好事例として、労働時間が一定を超えた際の制度除外、医師面談の実施、業務負荷の平準化などを挙げ、職場の実態を知る労使委員会の機能強化を求めています。さらに、制度適用時の本人同意についても、拒否事例がある企業が36%にのぼることから、一定の機能は果たしていると主張しました。

 高市総理は、4月の日本成長戦略会議において、制度対象のあり方を含め裁量労働制の見直しに向けた検討の加速を指示しています。人手不足時代の働き方改革として、今後、労働市場改革分科会や労働政策審議会で議論が本格化する見通しです。AI時代の新たな雇用制度として、生産性向上と健康確保をいかに両立させるかが焦点となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)