家族の一員であるペットに配慮した住宅が近年注目されている。
景気悪化の影響もあり、ここ2年ほどは微増の成長になっているペット産業。だが、「日本における空前のペットブーム到来」と言われ、順調に右肩上がりに成長してきた市場は現在も1兆円を越える大きさを誇っている。
最近の日本のペット市場は「小型化」「高齢化」「室内飼育」の3つのキーワードからなり、獣医療の向上などにより、長生きをするペットが増加したことを要因とする「高齢化」は別として、住宅事情を反映した「小型化」「室内飼育」という2つのキーワードは住宅メーカーからも熱い視線を浴びている。
具体的に言うと、犬においては、ミニチュア・ダックスフンド、チワワといった小型犬種の人気が高く、飼育場所も7割以上の世帯が室内を占めており、猫も8割が室内飼育というデータがある(ペットフード協会調べ)。この結果、ますます室内での飼育環境は重要な要素になっているのが現状だ。だが、室内飼育の環境は千差万別。果たして”もう一人の家族”は安心して暮らせる住環境を手に入れているだろうか?
近年、犬の関節系トラブルがクローズアップされているが、これは近代住宅の床材の主流であるフローリングが、犬にとって硬くて滑りやすく、そしてバランスが取りづらいために、股関節形成不全を引き起こしたり、O脚になりやすいと言われているから。さらに、ソファーなどから飛び降りた際に、骨折や脱臼の危険性もあり、飼い主は室内飼育に気を遣わなければならなくなった。このようなトラブルを受け、関連団体などは室内飼育におけるガイドライン策定や啓蒙活動を盛んに行う動きも見せている。
環境省は昨年2月に「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」を発表し、犬や猫を家族の一員として位置づけ、適正な飼育を目指すための項目を設けるなど、多くの人に向け啓蒙活動をしている。その中で、室内飼いの注意の項目には”床材の配慮”などもうたっている。
他にも、純粋犬種の保護と質的向上のため血統証明書の発行や有能・優良犬の普及などを主な活動とする、社団法人ジャパンケネルクラブでは、会報誌『ガゼット』を発行しており、2009年9月号(P.6-15)において、いち早くこのような問題をテーマとして取り上げ、「人も犬も笑顔になれる快適ハウスを考える」と題し、特集を組んでいる。
一方、住宅メーカーもペットと暮らす事を前提とした戸建住宅の提案を行う企業が増えてきた。しかし、建替えともなると大掛かりになってしまう上に、コストも高い。そんな中、積水ハウスはリフォーム対応で”滑らない”"傷つかない”"丸洗いできる”というペット専用の床材「ファブリックフロア」を販売している。適度なクッション性によって、土の上の歩行感があり、部分的な交換も可能なメンテナンス性を備える。
このような「ペット共生住宅」は確立したペット市場を背景に、ひとつの選択肢として今後もますます成長していくに違いない。家族の一員に配慮した住まいづくりはますます注目される。