為替レート 70円台想定は皆無 東証上場企業

2011年07月29日 11:00

 円高の急騰を受け、東京商工リサーチが東京証券取引所1部、2部上場企業(電気機器、自動車関連、機械、精密機械メーカーなど2012年3月期決算業績見通しで想定為替レートが分かった121社)を対象に行った想定為替レート調査で、約半数にあたる60社が1ドル80円に設定していたことが分かった。70円台を想定した企業は皆無だった。

 東京商工リサーチでは「すでに外国為替相場は想定レートを上回る円高レンジに入っており、このままの水準で推移すると、景気を牽引してきた輸出企業の国際競争力が落ち込み、生産拠点の海外移転に一層拍車がかかる可能性も出てきた」と進みすぎる円高に警鐘を鳴らしている。

 為替レートは今月26日、東京外国為替市場で1ドル77円80銭台にまで進んだ。こうした中、東証上場企業が想定レートをどう設定していたかをリサーチが分析した結果、80円が60社でもっとも多かったが、83円が21社、85円が17社、82円が14社、81円が5社、84円が2社、86円が1社、最安値の90円が1社と70円台のレート想定社は1社もなかった。

 リサーチでは「輸出依存度の高い日本にとって、想定レートを超える円高が進むと企業収益の悪化から、否応なしに産業の空洞化という深刻な事態が本格化することも懸念される。円高は輸入関連にはメリットもあるが、海外からの安価商品流入はデフレと低価格に翻弄される中小企業に一層の価格引き下げを強いる。また、デリバティブ(金融派生商品)取引で損失が拡大すると、一服状態にあった円高関連倒産が再び増加に向かう可能性も高まってくるとみられる」と円高が続くことの厳しい影響を指摘している。
(編集担当:福角忠夫)