日本の食料自給率37%、なぜ生産額では66%なのか 「3つの自給率」から見る食料安全保障

2026年08月11日 07:09

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農林水産省。2025年度の食料自給率はカロリーベースで37%に低下する一方、生産額ベースでは66%に上昇した

今回のニュースのポイント

農林水産省が取りまとめた2025年度(令和7年度)の食料自給率は、カロリーベースで前年度から1ポイント低下の37%となった一方、生産額ベースでは前年度から2ポイント上昇の66%となりました。さらに新基本計画に基づく新たな指標「摂取熱量ベース」は45%となりました。同じ日本の食料自給率でありながら37%、45%、66%と数値が大きく乖離する背景には、米の消費量減少や民間在庫量の増加、米価などの価格上昇、輸入飼料への依存構造など、各指標が捉える対象の違いがあります。

本文
 農林水産省が発表した2025年度(令和7年度)の食料自給率は、熱量で計算する「カロリーベース」で前年度比1ポイント低下の37%となりました。その一方で、金額で換算する「生産額ベース」は同2ポイント上昇して66%へ伸長。さらに、平時に必要とされる熱量を基準とした新指標「摂取熱量ベース」では45%と算出されました。

 「日本の食料自給率は37%」という数値だけでは、日本の食料事情の全体像を捉えることはできません。なぜ指標によってこれほど大きな差が生じるのか、その構造的な背景と食料安全保障上の意味を読み解きます。

■ カロリーベース37%、米の供給熱量減が押し下げ

 2025年度のカロリーベース食料自給率は37%となり、前年度から1ポイント低下しました。1人1日あたりの国産供給熱量が前年度の858kcalから830kcalへ28kcal減少したことが主な要因です(総供給熱量は2,237kcal)。

 米の国産供給熱量は前年から22kcal減少し、自給率に対する寄与度は▲0.8ポイントとなりました。農水省は、米の消費量が減少し、民間在庫量が増加したことを要因として挙げています。1人あたりの年間消費量は前年度の53.3kgから52.0kgへ減少しました。

■ 一方、生産額ベースは66%へ上昇 米価48%上昇が押し上げ

 カロリーベースとは対照的に、生産額ベースの食料自給率は前年度の64%から66%へと2ポイント上昇しました。国内生産額が14兆4,624億円(前年比1兆5,876億円増)、国内消費仕向額が21兆7,672億円(同1兆6,161億円増)となった結果です。

 こちらの押し上げ役となったのも「米」です。米の国内生産額は前年から1兆2,696億円増加し、生産額ベース自給率を+1.9ポイント押し上げました。農水省の分析によると、米の国内価格が前年から48%上昇したことが生産額の大幅増に寄与しています。また、鶏卵価格の上昇(+26%)などにより畜産物の国内生産額も4,624億円増加し、+0.9ポイント寄与しました。

 つまり、2025年度の自給率は「量(カロリー)で見ると下がったが、価格(金額)で見ると上がった」という、真逆の動きを示したことが特徴です。

■ 新指標「摂取熱量ベース」は45%

 今回の発表では、2025年の食料・農業・農村基本計画に基づき設定された新指標「摂取熱量ベース」の食料自給率が45%となったことも提示されました。

 従来のカロリーベース(37%)は総供給熱量2,237kcalを分母とする一方、「摂取熱量ベース」は、平時に国民1人1日当たりが摂取する必要がある熱量として設定された1,850kcalを分母とします。2025年度は国産供給熱量830kcalを基に45%となりました。37%と45%のどちらかが誤っているのではなく、「何を基準として算定しているか」という定義の違いによるものです。

■ 畜産物は「国産」でも飼料は輸入依存という構造

 食料安全保障を議論するうえで避けて通れないのが「飼料」の問題です。日本の飼料自給率は24%にとどまっています。

 輸入飼料で育てた肉や卵も「国内生産」としてカウントする「食料国産率」で見ると、カロリーベースで46%となり、自給率(37%)と9ポイントの開きが生じます。この差は、国内で生産された畜産物でも、その生産に輸入飼料を使用している場合、食料自給率ではその輸入飼料分を国産として算入しないことから生じます。

・牛肉:食料自給率13% / 食料国産率50%

・豚肉:食料自給率 5% / 食料国産率49%

・鶏肉:食料自給率 7% / 食料国産率65%

・鶏卵:食料自給率11% / 食料国産率97%

 国内の畜産業で生産されていても、その餌を海外からの輸入に依存している構造が数値に表れています。

■ 主要国比較と輸入相手国の集中リスク

 国際比較では、日本の2025年度のカロリーベース食料自給率は37%で、2023年の各国の試算値と比べても低い水準にあります。オーストラリア257%、カナダ195%、フランス119%、米国112%、ドイツ81%、英国56%となっており、日本は比較対象となった主要国の中で最も低い水準です。

 さらに日本の供給カロリーの国別内訳を見ると、国産(37%)以外では、米国(26%)、カナダ(11%)、オーストラリア(10%)の3カ国からの輸入で全体の47%を占めており、国産と合わせるとこの4カ国だけで供給カロリーの84%に達します。自給率の数値そのものに加え、輸入相手国が少数の国に集中している構造も存在します。

■ 注目ポイント

 2025年度の食料自給率は、カロリーベースでは37%へ低下した一方、生産額ベースでは66%へ上昇しました。これは、食料安全保障が一つの数値だけでは測れない多面的なものであることを示しています。

 米や食材の価格が上がれば金額ベースの数値は改善しますが、国内で供給できる実際のカロリーが減ればカロリーベースは低下します。また、どれだけ国内で畜産を行っていても、飼料の多くを海外に頼っていれば、食料自給率上の「国産」としてはカウントされません。

 「自給率37%」という数字の上下だけに注目するのではなく、それぞれの指標が意味する定義や、輸入飼料への依存、特定国への輸入集中度まで含めて多角的に現状を把握することが、食料安全保障を考える上で重要となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)