国家公務員給与3.3%引き上げへ 地方公務員は地域差も、総務省が給与改定と手当見直しを要請

2026年10月10日 11:43

都庁

東京都庁。政府が国家公務員の給与引き上げ方針を閣議決定したことを受け、総務省は全国の地方自治体に対し、地域の民間給与や財政状況などを踏まえた適切な給与改定を求めた。(写真は資料画像)

今回のニュースのポイント

政府は2026年10月9日、人事院勧告どおり国家公務員の給与を引き上げる方針を閣議決定しました。これを受け総務省は同日、全国の地方自治体に対し、地域の実情や給与制度の均衡等を踏まえた適切な給与改定を求める通知を発出しました。2026年の人事院勧告に基づく国家公務員の月例給平均3.3%引き上げの方針が直ちに全地方公務員に一律適用されるわけではなく、各自治体が人事委員会勧告や財政状況を踏まえて判断します。記事では、給与引き上げの概要に加え、地域手当による手当率の違いや2027年度の経過措置、転居手当の新設、非常勤を含む会計年度任用職員の給与適正化といった多角的な動きを整理します。

本文
 政府は10月9日、公務員の給与改定に関する取扱いを閣議決定し、2026年8月7日の人事院勧告どおり国家公務員の給与を引き上げる方針を固めました。これを受け同日、総務省は全国の都道府県知事や指定都市市長らに向け、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて」と題する通知を発出しました。通知は地方公務員法に基づく技術的助言として、各自治体に対して国家公務員の改定動向や地域の民間給与、財政状況などを総合的に勘案し、適切に対処するよう要請しています。全国一律の引き上げを即座に確定させるものではなく、最終的な改定は自治体ごとの判断に委ねられます。

 今回の国家公務員の給与改定方針では、国家公務員の行政職俸給表(一)について、月例給を平均3.3%引き上げる方針が閣議決定されました。官民の給与差を埋めるため、初任給の大幅な改定に加え、業務の中核を担う中堅層以上の職員に対しても前年を上回る増額を行う内容です。フルタイム勤務の再任用職員についても近年の水準を上回る引き上げが盛り込まれました。また、特別手当である期末・勤勉手当については年間支給月数を合計0.05か月分引き上げ、2026年度は12月支給分を0.05か月分(期末・勤勉それぞれ0.025か月分)増額する方針です。ただし、平均3.3%という数字は全体の平均改定率であり、すべての職員が一律に同率引き上げられるわけではありません。

 地方公務員の給与改定については、各自治体が地方公務員法に定める均衡の原則に基づき、独自に判断を下す仕組みとなっています。具体的には、各地の人事委員会が発出する勧告や報告、管内の民間企業の賃上げ動向、国家公務員との均衡、さらには自治体自身の財政状況などを精査して判断します。人事委員会を置かない市町村では、都道府県人事委員会の調査結果なども参照されます。最終的な給与改定には自治体議会での条例改正手続きと十分な審議が必要であり、国の閣議決定がそのまま全地方公務員の賃上げ率になるわけではありません。

 今回の通知で改めて注視されるのが、勤務地域ごとの民間給与水準を反映させる「地域手当」の存在です。総務省の資料に示された基本となる級地区分と支給割合では、1級地の東京都特別区が最高水準の20%となっています。続いて2級地(16%)に東京都、横浜市、川崎市、大阪市、つくば市などが該当し、3級地(12%)には神奈川県、大阪府、さいたま市、千葉市、名古屋市、西宮市などが指定されています。さらに4級地(8%)には愛知県、京都府、兵庫県、仙台市、広島市、福岡市などが並び、5級地(4%)に茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、札幌市、岡山市、高松市などが位置しています。

 この地域手当は、同じ都道府県内であっても市町村ごとに適用区分が細かく分かれる構造を持っています。例えば兵庫県の場合、県の基本区分は5級地の4%に設定されていますが、県内の神戸市は4級地の8%、西宮市や芦屋市、宝塚市は3級地の12%と手当率が高く設定されています。東京都でも特別区の20%に対して都の基本区分は16%となるなど、同一地域内での違いが存在します。これらは地域手当の算定対象となる給与に対する支給割合を示すものであり、今回の給与引き上げ率とは異なる制度的指標です。

 さらに制度改正に伴い、2027年度の地域手当支給にあたっては過度な急変を防ぐための経過措置が設定されています。新制度で同じ級地に分類される地域であっても、見直し前の旧級地や旧支給割合によって2027年度に適用される実際の支給割合が段階的な移行段階にとどまるケースがあります。地域手当の基本割合と経過措置による実際の支給割合は異なる場合があり、自治体ごとの給与水準を比較する際には注意が必要です。

 転勤に伴う経済的負担を和らげる諸手当の見直しも進められています。国においては、単身赴任の有無にかかわらず、転居を伴う異動を行った職員を広く対象とする「転居手当」を2027年4月1日から新設する方針が示され、単身赴任手当の加算額の再編や支給改善が図られます。また、広域的な異動に対するインセンティブを高める「広域異動手当」についても、2026年4月1日に遡って支給割合を引き上げる方針です。総務省は地方自治体に対し、関係法令の改正動向や地域の実情に応じた適切な手当制度の設計を呼びかけています。

 非常勤職員を含む「会計年度任用職員」の待遇改善についても触れられています。通知では、職務給の原則や均衡の原則に基づき適切に給料や報酬を決定するとともに、地域の実情として「最低賃金」の改定動向に留意するよう指示しています。さらに、常勤職員の給与改定が行われた場合には、実施時期を含め、常勤職員の取扱いに準じて会計年度任用職員の給与を改定することを基本としています。単に全非正規職員の給与が一律に自動増額されるわけではありませんが、適切な待遇確保が強く求められます。

 給与の引き上げと並び、人事評価の厳格な運用と給与制度の適正化も通知の重要な要素です。評価結果を反映させずに勤勉手当や昇給を一律に行うといった運用や、職務内容に合わない高位級への昇格(いわゆる、わたり)などの是正が求められています。国家公務員の賃上げ方針が提示されたことを受け、今後は全国の地方自治体において、地域ごとの民間給料水準や財政基盤を見極めた慎重かつ厳格な給与改定の議論が本格化します。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)