EU、重要鉱物46事業を新たに戦略指定 採掘・精錬・リサイクル強化で供給網の域内確保へ

2026年10月11日 08:26

EUイメージ

欧州連合(EU)の旗。欧州委員会は2026年10月9日、重要原材料法(CRMA)に基づき、採掘・加工・リサイクルなど46件の事業を新たな戦略プロジェクトに指定した。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

欧州委員会は2026年10月9日、重要原材料法(CRMA)に基づき、EU域内16加盟国に位置する46件の事業を新たな「戦略プロジェクト」として選定したと発表しました。対象はリチウムやニッケル、レアアース、マグネシウムなど15種類の重要原材料に及びます。単なる鉱石の採掘にとどまらず、精錬・加工やリサイクルを含めた供給網全体の強化を掲げており、電気自動車用電池や防衛・航空宇宙、永久磁石などの重要産業における域外依存の低減を目指します。2025年に指定された60件と合わせ、指定事業は累計106件に拡大しました。

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 欧州委員会は10月9日、重要原材料法(CRMA)に基づき、EU域内16加盟国に所在する46件の新たな事業を「戦略プロジェクト」として選定したと発表しました。今回の指定は、電気自動車(EV)や蓄電池、防衛・航空宇宙、永久磁石といった先進産業に欠かせない重要鉱物について、特定国への過度な依存を脱却し、供給源の多様化と域内での供給能力確保を加速させることを目的としています。選定は102件の応募から厳格な審査を経て行われ、ベルギー、フランス、ドイツ、スウェーデンなど幅広い加盟国の事業が対象となりました。

 今回指定された46件の事業内訳を見ると、単なる資源の採掘だけではなく、製造・再利用工程に重点が置かれている点が大きな特徴です。具体的には、採掘が8件、精錬・加工が11件、リサイクルが19件となっています。さらに、採掘と加工を組み合わせた一体型が3件、加工とリサイクルを組み合わせた一体型が5件含まれており、リサイクル工程に関与する事業は合計24件に上ります。鉱石の掘り出しから精錬、使用後の資源循環まで、域内における包括的なサプライチェーンの構築を目指すEUの方針が明確に示されています。

 対象となる素材は、CRMAで規定された17種類の戦略原材料のうち15種類をカバーしています。産業別では、EVや定置用蓄電池の供給網を支える素材として、リチウム(7件)、ニッケル(12件)、コバルト(10件)、マンガン(5件)、高純度黒鉛(4件)が選定されました。また、防衛や航空宇宙産業に不可欠なマグネシウム(2件)やタングステン(3件)、風力発電機や高性能モーターの永久磁石に用いられるレアアース(4件)など、広範な戦略産業をカバーするポートフォリオが組まれています。

 CRMAでは、2030年までにEUの年間消費量に対し、域内での供給能力を採掘で少なくとも10%、加工で少なくとも40%、リサイクルで少なくとも25%に引き上げる政策目標を掲げています。欧州委員会によると、2025年に指定済みの事業と今回の新たな46件が順調に稼働すれば、リチウムやニッケル、レアアース、マグネシウム、タングステンの採掘目標や、リチウムとレアアースの加工目標などを将来的に達成し得る見通しであるとしています。もっとも、これらは今後の事業化を前提とした見通しであり、現時点での生産実績ではありません。

 EUにおける戦略プロジェクト指定の累計は、2025年に選定された域内47件および域外13件(計60件)と合わせ、106件に拡大しました。先立って指定された2025年のプロジェクトでは、各加盟国の窓口設置による許認可手続きの加速が図られており、すでに25件の事業で環境影響評価が完了し、17件の事業が建設許可を取得するなど具体的な進捗が見られています。EUは新たな指定事業においても迅速な許認可と事業化を促す考えです。

 事業化に向けた資金面や市場調達の環境整備も進められています。2025年12月のRESourceEU発表以降、欧州側の関係機関を通じて、イノベーション基金や国家補助、欧州投資銀行(EIB)などによる20億ユーロ超の金融支援が動員・コミットメントされています。また、原材料の需要と供給を結び付ける仕組みを通じ、10種類の素材で30件超のマッチングが生まれたとしており、供給先の確保に向けた取り組みも進めています。

 もっとも、今回の戦略プロジェクトへの選定は、直ちに設備の完成や製品の供給開始を意味するものではありません。指定を受けた事業が実際に生産を開始するまでには、建設許可の取得や環境基準の遵守、民間資金を含めた投資の確定、プラントの建設といった複数のプロセスを経る必要があります。法的な優遇措置や公的金融支援の枠組みが、プロジェクトの最終投資決定(FID)や円滑な操業開始へどこまで結実するかが実効性を左右することになります。

 世界的に重要鉱物の獲得競争や偏在リスクが高まる中、EUは採掘から精錬、リサイクルに至る産業基盤を域内に確保しようと着実に手を打っています。今回指定された46事業が計画通り建設許可を得て資金調達を果たし、2030年の供給目標に向けた実質的な生産能力として立ち上がるかどうかが、欧州の産業競争力と資源安全保障のゆくえを占う鍵となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)