カナダ、低炭素燃料規則の改正案 30億加ドル超のクレジット市場で国内生産投資促進へ

2026年10月28日 11:09

プラント

製油所などの燃料製造設備。カナダ政府は低炭素燃料規則の改正案を発表し、国内生産者の競争条件改善と設備投資の促進を目指している(イメージ画像)

今回のニュースのポイント

カナダ政府は10月27日、低炭素燃料規則の改正案を発表しました。既存制度のクレジット市場は30億カナダドル超に成長しており、今回の見直しでは国内生産者の競争条件改善と設備投資促進を目指します。対象には製油所での植物由来原料の混合処理や、エタノール施設などでの炭素回収が含まれます。政府は別途、国内バイオ燃料生産に最大3億7,200万カナダドルの支援制度も設けています。改正案は10月30日に官報掲載され、75日間の意見募集が予定されています。

本文
 カナダ環境・気候変動省は2026年10月27日、国内の低炭素燃料産業の競争力強化と設備投資の促進を目的とした「クリーン燃料規則(Clean Fuel Regulations)」の改正案を発表しました。現行規則の下で運用されている燃料クレジット市場はすでに30億カナダドル超の規模に成長しており、今回の改正案はこの市場メカニズムを通じて国内の燃料供給網における排出削減投資を一段と加速させることを目指しています。公表された改正条文案は10月30日にカナダ政府の官報(Canada Gazette Part I)へ正式掲載される予定で、その後75日間のパブリックコメント(意見募集)期間に入ります。

 低炭素燃料規則は、化石燃料の製造・輸入事業者に対して燃料のライフサイクル全体における炭素集約度の低減を義務付ける制度です。事業者は自ら排出削減を実施するほか、低炭素燃料の供給や特定プロジェクトの実施によって「適合クレジット」を取得し、これを取引・活用することで規制を達成します。政府が言及した30億カナダドル超という数字は、既存のクレジット市場の規模を示すものであり、政府が新たに投じる公的予算や、今回の改正に伴う新規投資決定額ではありません。

 改正案では、カナダ国内で生産された一定の低炭素燃料や、製油所で混合処理された低炭素燃料などについて、既存の適合クレジットに関連する追加クレジットの創出を認める仕組みが提案されています。算定には燃料の種類に応じた係数が使われ、対象によっては北米産原料の比率も反映されます。条文案における北米産原料の定義はカナダ、米国、メキシコで採取・生産・回収された原料を指しており、カナダ産原料を使えば無条件に追加クレジットが得られるわけではありません。

 今回の改正案が投資促進の対象として見据える技術分野は多岐にわたり、既存のエタノール製造施設などにおける炭素回収・貯留(CCS)設備の導入や、石油製油所で菜種(キャノーラ)油などの植物由来原料を原油と混合して精製する高度な処理設備への投資などが想定されています。新興のバイオ燃料専業工場を新設するだけでなく、既存の化石燃料インフラを低炭素燃料の生産拠点へと改修・転換する設備投資に対してもインセンティブが付与される設計となっています。ただし、今回の政府発表は制度案の提示であり、具体的な設備投資の実行額や増産能力の数値は個別企業の今後の判断に委ねられています。

 一方、これまでの既存制度の下でも活発な投資実績が積み上がってきました。政府の説明によると、すでに国内6カ所の製油所において植物由来原料と原油の混合処理事業が進んでいるほか、液体低炭素燃料の製造設備や菜種の搾油工場の増強、さらには水素や再生可能天然ガス(RNG)の製造施設への民間投資が生まれています。また、電気自動車(EV)の住宅用および公共用充電設備の整備に対しても、制度を通じて1億8,500万カナダドル超に相当するクレジットが創出されました。これらは既存規則の成果として示された実績であり、今回の改正案公表によって直ちに新規着工が決定したものではありません。

 燃料産業を巡っては、規制による市場設計と並行して、直接的な財政支援プログラムも運用されています。カナダ政府は「バイオ燃料生産インセンティブ(Biofuels Production Incentive)」プログラムを通じ、国内のバイオディーゼルおよび再生可能ディーゼル生産者に対して生産量に応じた支援として最大3億7,200万カナダドルの資金枠を用意しています。この制度は2027年12月まで申請を受け付けており、今回の低炭素燃料規則の改正とは法的な枠組みが異なる別の支援策です。カナダ政府は、クレジット制度という規制手段と、直接的な生産支援という財政手段の双方を組み合わせて国内バイオ燃料基盤の育成を図っています。

 カナダ国内では日量約2億リットルに上るガソリンおよび軽油が消費されており、輸送用燃料の低炭素化は同国の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた最重要課題の一つです。今回の改正案は、政府が新たな直接補助金を支出するのではなく、30億カナダドル超のクレジット市場における評価基準を改定することで、国内生産者やインフラ投資家の投資妙味を高めようとする産業政策的なアプローチです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)