フラット35の不適正利用64件、融資額30億円超 会計検査院が審査改善へ意見表示

2026年10月21日 07:28

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戸建て住宅が並ぶ住宅街。会計検査院は、住宅ローン「フラット35」の不適正利用64件、融資額計30億4074万円を確認し、融資審査体制の改善を求めました(イメージ写真)

今回のニュースのポイント

会計検査院が10月20日に公表した検査結果によると、住宅ローン「フラット35」で、店舗や宿泊施設などとして利用される不適正利用が64件、融資額計30億4074万円確認されました。審査時に提出された間取り資料や自治体の公表情報からリスクを把握できた可能性も指摘されています。会計検査院は住宅金融支援機構に対し、64件への是正要求とともに、融資審査シートや顧客説明資料の具体化など再発防止策を求める意見を表示しました。

本文
 会計検査院は10月20日、住宅金融支援機構が買取りなどを行う長期固定金利住宅ローン「フラット35」について、借受者が自ら居住するなどの要件を満たさない不適正利用が64件、融資額にして計30億4074万円確認されたと公表しました。対象物件が無断で店舗・事務所や民泊施設などに転用されていた事態を受け、同院は同機構に対して必要な是正措置を講じるよう要求するとともに、融資審査体制や顧客説明の改善を求める意見を表示しました。

 フラット35は、民間金融機関が提供する住宅ローン債権を住宅金融支援機構が買い取るなどして支援する証券化支援事業の仕組みに基づいています。本制度は、借受者自身や親族が居住する住宅の取得などを対象としています。店舗や事務所を併設する住宅でも、住宅以外の部分は融資対象にならず、貸主の承諾なく住宅を別の用途に使用することなどは契約上の不適正利用に該当します。

 今回の検査は、2023・2024年度(令和5・6年度)に同機構が買い取った全5万4221件(約1.7兆円)の債権のうち、需要が高く外観上の確認が比較的容易な都市部の戸建て住宅など1万925件(融資額4078億6639万円)を抽出し、実地検証等を行ったものです。確認された64件・30億4074万円は抽出検査の結果であり、全体からの推計値や機構の直接的な損失額を示すものではありません。

 不適正利用の具体的な内訳は、店舗や事務所として無断利用されていたケースが39件(16億6395万円)、民泊・特区民泊・旅館業の施設として転用されていたケースが25件(13億7679万円)にのぼります。店舗等利用では美容室やエステサロンが16件、飲食店などが9件含まれており、民泊等利用では旅館業が16件、民泊が7件、特区民泊が2件となっています。住宅ローンで取得された戸建て住宅が、事実上の事業用物件として使われていた実態が浮かび上がりました。

 審査段階での兆候の見落としも指摘されています。店舗利用された39件のうち32件では、店舗用と居住用とみられる2か所の出入口が設置されていました。そのうち6件では間取り資料の提出すら受けておらず、提出されていた事例の中にも業務用設備を窺わせる記載がありました。福岡市では5490万円の融資を受けた新築戸建ての1階がラーメン店として営業されており、審査提出資料には「オーダーカウンター」との記載が存在していました。こうした記載は、融資審査の段階で住宅の用途を詳しく確認するための手掛かりになり得たと考えられます。

 また、民泊等への不適正利用25件のうち12件(融資額計6億7226万円)は、申込時点での情報から将来のリスクを認識できた可能性がある事例とされています。東京都墨田区の中古住宅では申込時の1年以上前から自治体ウェブサイトで旅館業の許可情報が公表されており、東京都豊島区の新築住宅では借受者の勤務先が宿泊施設管理業者と一致していました。間取り図面だけでなく、自治体の公開情報や申込者の勤務先情報もリスク検知の手掛かりになり得たといえます。

 検査院は個別の違反事例にとどまらず、制度運用上の課題を提示しました。金融機関が使用する「融資審査シート」には事業用取得への注意項目があるものの、間取り資料の提出や民泊確認などの具体的な審査手続が明確化されていませんでした。さらに借受者向けの「顧客説明資料」でも、民泊や旅館業への無断転用が繰上償還義務を伴う不適正利用に当たる旨の具体的な説明が欠けていました。

 これらを踏まえ、会計検査院は会計検査院法第34条に基づき、住宅金融支援機構に対し、64件について借受者に融資要件に適合するための対応を取らせ、必要な対応ができない場合には全額繰上償還の請求などの措置を講じるよう要求しました。あわせて同法第36条に基づき、融資審査シートへの確認方法の明記、顧客説明資料への注意事項の記載、および提携金融機関への周知徹底を求める意見を表示しました。

 住宅の利用形態が多様化するなか、住宅ローン制度の健全な運用には、借受人の規約順守はもちろん、融資側による実効性ある審査体制と具体的な説明が不可欠となります。今回の検査は、審査機関が保有・把握可能な情報をいかに連携・活用し、不適正利用の未然防止につなげるかという運用の課題を浮き彫りにしています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)