今回のニュースのポイント
信越化学工業が2026年10月27日に発表した2027年3月期中間決算は、売上高が前年同期比10.6%増の1兆4,206億円、営業利益が15.6%増の3,859億円となりました。データセンターを中心とするAI関連投資の拡大を背景に、電子材料事業の営業利益は28%増加しました。一方、塩化ビニルなどを扱う生活環境基盤材料事業は16%減益でした。通期業績予想は従来予想を据え置き、年間配当予想も136円で変更していません。
本文
信越化学工業株式会社が10月27日に発表した2027年3月期中間連結決算(2026年4月1日~9月30日)は、売上高が前年同期比10.6%増の1兆4,206億円、営業利益が同15.6%増の3,859億円となりました。経常利益は同13.0%増の4,151億円、親会社株主に帰属する中間純利益は同11.3%増の2,869億円を計上しました。世界的なインフレや金利上昇などの不透明感が残る中でも、データセンターを中心とする人工知能(AI)関連投資の加速を背景に、半導体材料を中核とする電子材料事業が増収増益を達成し、全社の業績拡大を力強く牽引しました。
事業部門別では、電子材料事業が際立った成長を示しました。同事業の売上高は前年同期比16%増の5,777億円、営業利益は同28%増の2,189億円に達しました。同社の説明によると、AI関連需要の目覚ましい拡大に伴って半導体市場が大きく伸長し、一部の製品群では供給が逼迫する状況も生じました。これに対し、精緻な供給対応や価格改定を進めたことが半導体材料全体の売上増加に寄与しました。なお、この2,189億円の営業利益は電子材料事業全体の数値であり、AI向け製品単独の利益額を示すものではありません。
対照的に、塩化ビニル樹脂などを手掛ける生活環境基盤材料事業は増収減益となりました。売上高は前年同期比4%増の5,221億円を確保したものの、営業利益は同16%減の862億円にとどまりました。同事業では、5月後半にアジアおよび周辺地域において在庫過多や需要鈍化を背景に市況が軟化しました。7月には値上げが実現し、その後の市況は一進一退ながら安定して推移しました。か性ソーダもおおむね堅調でしたが、同事業の営業利益は前年同期を下回りました。半導体向け材料の活況とは対照的な事業環境が浮き彫りとなっています。
そのほかの事業部門も堅調な推移をみせました。機能材料事業は高付加価値品群の販売拡大が寄与し、売上高が前年同期比11%増の2,456億円、営業利益が同31%増の632億円となりました。加工・商事・技術サービス事業も半導体ウエハー関連容器の需要に支えられ、売上高が同12%増の751億円、営業利益が同28%増の174億円と増収増益を確保しました。これら高採算分野の伸びに伴い、全社の売上高営業利益率は前年同期の26.0%から27.2%へと上昇し、収益性の改善が確認されました。
四半期ごとの推移をみると、直近の2026年7~9月期においても利益成長の勢いが持続しました。同四半期の営業利益は2,121億円となり、同社によれば前年同期比で27%の増益を達成しました。経常利益も2,229億円と同20%の増益となっています。前四半期(4~6月期)の営業利益1,737億円、経常利益1,921億円と比較しても水準を切り上げており、年度前半を通じて主力の半導体材料を中心に事業活動が堅調に推移したことが示されています。
2027年3月期の通期連結業績予想については、2026年7月公表の内容をそのまま据え置きました。通期の売上高は前期比4.9%増の2兆7,000億円、営業利益は同10.2%増の7,000億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同10.7%増の5,250億円を見込んでおり、今回の中間決算に伴う上方修正は行っていません。また、年間配当予想も1株当たり136円(普通配当116円、創立100周年記念配当20円)を維持しました。中間配当は記念配当20円を含む78円ですが、これらは9月15日に公表済みであり、新たな増配発表ではありません。
今回の決算は、全社ベースでは二桁の営業増益を達成したものの、その内実は事業分野ごとに明暗が分かれる結果となりました。データセンターを中心とするAI関連投資を背景に半導体市場が伸長し、一部の製品群では供給が逼迫しました。一方、塩化ビニルなどの汎用素材では、地域的な需給バランスや市況の変動が収益に影響しました。同一の化学大手企業であっても、急速に拡大する先端デジタル投資を捉える事業群と、景気循環の波にさらされる基礎素材事業群との間で収益環境の違いが鮮明となっており、ポートフォリオ経営の重要性を示す事例となっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













