海遊びを変えるヤマハ発のレンタルボートビジネス

2011年05月30日 11:00

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全国140ものマリーナでレンタカー感覚でボートを借り、クルージングを楽しむことができる、ヤマハ発動機の会員制マリンクラブ「Sea Style」

 これまでは、一部の富裕層だけに許される遊びとされていた、ボートやヨット、クルーザーなどを使った本格的なマリンレジャーが、最近では一般の人々にとっても身近になってきているという。

 その新しい流れを作ったのが、ボートメーカーでもあるヤマハ発動機が2006年から始めた「シースタイル」という会員制のマリンクラブの存在だ。同クラブでは、ボートやクルーザーを所有するのではなく、一定額の会費を払って会員になるだけで、提携する全国各地の140ものマリーナで、自分の都合の良い時間にレンタカー感覚で借りることができるという。サービス開始以来、その手軽さから徐々に評判が広まり、現在では1万4千人もの会員数を誇る大規模なマリンクラブへと成長している。

 同社がこのプロジェクトを始めた背景には、バブル崩壊後のボートやクルーザーの国内出荷台数の急激な落ち込みがあった。その悪い流れを食い止めるべく、国内マリン需要をもう一度喚起させようと考えた末、同社が行き着いた答えが、ボートなどを時間単位でレンタルするという会員制マリンクラブのスタイルだった。このシステムなら、利用者はいつでもどこでもクルージングを楽しめ、さらに高額な維持費も支払わなくても良い。提供するボートメーカーのヤマハ発動機からすれば、マリンクラブ用としてある程度の出荷台数が見込めるため、工場のラインを止めることなく、効率的な生産態勢を維持することができる。また、同マリンクラブでは、快適な環境を会員に提供する為、製造から3年以上経過したボートは使用していないという。

 21世紀に入り、国内市場が縮小へと向かっていく流れを、指を銜えてただ見ているのではなく、新たな発想を投げかけることで、さらなる需要を生み出したヤマハ発動機のマリン戦略。実際、同社が先日に発表した2011年12月期第1四半期連結業績を見ると、北米や新興国など海外での需要増が大きな要因となっているものの、マリン事業部は直実に業績を回復してきている。二輪車で一時代を築き上げてきた柔軟な発想とたくましさが、マリン事業においても活かされているように思える。