本社移転企業が増加、東京・大阪から離れる傾向に

2013年03月13日 16:53

 工場の売却や新興国への移転、大幅な組織再編に伴う機能・拠点の集約など、企業の工場や営業所の移転を伴うニュースは数多く聞かれるが、一方で、本社の移転を伴う動きというものはあまり耳馴染みがないのではないだろうか。実際には、東日本大震災からの復興事業が続いたものの、不安定な電力供給体制、高い法人税率、弱含む海外経済など厳しい環境が続いたことから、より良い事業環境を求めて本社移転を実施した企業も少なくないことを示すデータが、帝国データバンクより発表された。

 帝国データバンクが2011年に引き続き実施した調査によると、2012年は前年を超える1万1143社の企業が本社を移転。放射能に関わる風評や電力供給不安に加えて、震災復興や厳しい経済環境下での生き残りをかけて、より良い環境を求めて移転する動きが、前年以上に高まったと推察されている。

 かつて本社の移転といえば、官公庁が集積し、多くの企業・情報が集まる東京や大阪といった大都市への移転が主流であった。しかし近時は、情報伝達のスピードが格段に上がる一方、大幅・早急なコスト削減を迫られる企業も少なくない。こうした状況を反映してか、2012年に都道府県を越える本社移転が判明した企業2338 社のうち転入超過地域上位については、大都市圏周辺の「埼玉県」(100社)、「神奈川県」(59社)、「千葉県」(10社)、「兵庫県」(27社)、「奈良県」(8社)など、東京都と大阪府に隣接するエリアが目立っており、その反面転出超過地域は、「東京都」(149社)、「大阪府」(75社)がそれぞれ1位と2位を占めている。大都市から地方都市への移転の例としては、NECトーキンが、経営判断の迅速化と管理・事業部門のコミュニケーション緊密化を狙いに、東京都千代田区にあった本社機能を主要4事業(EMC、リレー、圧電、RFID)の集まる宮城県白石事業所に集約。エム・エス・ケー農業機械も、東京都豊島区にあった本社部門を、北海道恵庭市に移転させている。このほか、原発事故の影響から、転出超過地域に「福島県」(20 社)が入った一方で、「宮城県」(16 社)、「鹿児島県」(14 社)、「富山県」(10 社)が転入超過の上位に入っている。

 年商規模別では、「10億円以下」の中小企業が9587社で構成比86.0%を占める一方、「100億円超 1000億円以下」の企業は260社(同2.3%)、「1000億円超」は50 社(0.5%)と、移転元、移転先地域経済への影響が大きい大規模企業は、全体の2.8%となっている。地方分権や、大都市と地方都市の情報格差、アクセスの利便性向上などが進めば、こうした大規模企業の移転はさらに増加するであろう。東京への一極集中がようやく解消されつつあるのかもしれない。(編集担当:井畑学)