海外を視野に展開する飲食ビジネスの今後とは

2011年05月09日 11:00

 ここ数年の飲食ビジネスは、経済の発展が著しい新興国への積極的な参入など、海外進出が目覚ましい。なかでも人口13億人を超える中国は、産業構造が国内消費型に移行傾向にあり、今後さらに拡大していく要素を多く含むマーケットとして世界各国が注視している。現在、日本は少子高齢化、または不況により消費が先細りしていくのは必須であることから、国内飲食メーカーのアジア圏を主とした海外への参入は加速度を増しているようだ。

 1206の国内店舗数を誇るカレーハウス「CoCo壱番屋」を運営する壱番屋は、1994年にハワイに1号店を出店し、中国15店、台湾9店、タイ10店、韓国8店、アメリカ5店、香港1店の計48の海外店舗を展開している(2011年4月末現在)。また、イタリアン・ファミリーチェーンサイゼリアやファーストフード・ハンバーガー専門店「イートラン」を展開するサイゼリアは、2003年に中国・上海に100%子会社の上海薩莉亜餐飲有限公司を設立し1号店をオープン。その後チェーン展開を進め、広州、北京、台湾、香港、シンガポールと順調に店舗数を増やしているという。

 一方、「和食さと」などを展開するサトレストランシステムズは、2008年2月に成長力のある中国・上海に現地法人を設立し、同年7月に和食さと(和食莎都)1号店「天山路店」をオープンさせている。しかし、都心から離れていたこと、価格設定の問題、また日本の海外駐在員が多かった地域であったことから、「中国でもサトを広げよう」という趣旨から外れていたことと、出店していた百貨店の全面リニューアル改装も重なり一時撤退、抜本的な再構築を検討したという。そこで台湾最大の流通・小売企業であり、セブンイレブン、スターバックス、ミスタードーナツ、MUJI等を展開する統一超商股?有限公司と協議を重ね契約を締結、合併会社統一上都股?有限公司を設立した。この契約終結に伴い同社の和食レストランチェーンのノウハウと、統一超商股分有限公司グループの台湾および中国でのネットワークと経営に関する経験を活用することで、事業拡大を狙っていくこととなった。

 すでに、2010年10月には台湾屈指のショッピングエリア信義地区に誕生した「統一阪急百貨 台北店」の7階に、和食さと(和食上都)「台北阪急店」をオープン。台湾の富裕層に、和食をリーズナブルな価格で提供することで順調な経営を行っているという。味のベースである出汁や調味料は日本産を使用しているが、現地の人に合う日本料理を創作。半年間は日本店より料理長を派遣し、接客スタイルも日本で約2ケ月の研修後に店舗に戻し、現地スタッフに伝えることで、細やかなサービスを届けることができているという。「日本料理の魅力は盛りつけの優雅さ、味の繊細さだと思っています。和食はヘルシーというイメージがあり、ブームになっていることから、きちんとエリアやターゲットを絞り、和食店ならではの料理や作法を伝えることで、必ず進出が加速していくと確信しております。上海店の仕切り直しにより、強化すべき点も見えた。今後はアジア圏内で5から10年の間に15店舗、進出する予定です」と担当者。すでに上海の都心部へ、2011年夏を目処に出店する計画も進んでいるという。

 立地、価格帯、料理内容は、その国、その地域により、支持される店舗業態は様々だ。同社は、上海1号店進出により、「現地食文化への対応」の必要性を経験し、さらに「日本料理の魅力」を再確認できたという強みがある。同社は今後、これまでの経験を糧に和食文化を海外へ伝承して行こうと考えているようだ。