足並みの揃わない、テレビメディアの海外進出

2013年03月27日 08:48

 その経済成長に魅せられ、製造業からサービス業まで、幅広い分野の企業が先を競って進出しているアジア市場。その波はテレビ業界にも波及しており、メディアのアジア進出も加速している。

 その筆頭が、電通 <4324>、日本テレビ放送網、テレビ朝日<9409>、東京放送ホールディングス<9401>、テレビ東京ホールディングス<9413>、シンガポールの投資会社Singapore Media Alliance、イマジカ・ロボット ホールディングス<6879>、北海道テレビ放送、小学館集英社プロダクションが共同で出資したテレビ事業の運営会社「J FOOD & CULTURE TV PTE. LTD.」による、アジア太平洋地域の国々をターゲットとした日本コンテンツ専門の総合エンタテインメント・テレビチャンネル「Hello! Japan(ハロー!ジャパン)」の立ち上げであろう。同チャンネルは既にシンガポールにて本放送を開始しており、インドネシア、フィリピン、香港、マレーシア、タイ、オーストラリア、ベトナム、インド、韓国、台湾へと順次放送エリアを拡大していく。

 一方、この仲間から外れたフジ・メディア・ホールディングス<4676>は、伊藤忠商事<8001>と共同で設立した「エフ・アイ・メディア企画(FIM)」を通じ、アジア各国におけるテレビ番組を核とした新規事業構想である「アジア・メディア・ネットワーク構想」の事業化調査を共同で実施。第1ステップとして、「音楽権利ビジネス」と「テレビ通販事業」の2分野で番組制作を行い、台湾、韓国、タイ、インドネシアの4か国、5つのメディアグループやテレビ局と業務提携を結び各国での放送をスタートする。その他、ジュピターショップチャンネルを有する住友商事 も、タイにおいてテレビ通販会社を設立するなど、海外進出が相次いでいる。

 メディアが海外進出する背景には、自国の存在感を高めることが進出する同国企業のブランドイメージの醸成や、旅行者の自国への誘致の増加を後押しするというものがある。その為、本来であれば足並みを揃えた海外進出が望ましいであろう。また、版権処理が国内のコンテンツホルダーにとって海外展開の障害となっており、業を煮やしたよしもとクリエイティブ・エージェンシーがCONTENT LAND INCと事業提携し、日本の映像コンテンツのアジア販売を推し進める独自ルートを開拓する事態になっていることも、どこか一元管理出来る組織が必要であることの証左であろう。しかし上記のとおり、若干の乱れが見られる。このことが、各社の競争によるより良いコンテンツの配信へと繋がるのか、それとも中途半端なものとなり、間違った日本のイメージを諸外国に広めてしまうこととなるのか、今後の動向に注視していく必要があるであろう。(編集担当:井畑学)