文部科学省と厚生労働省は今月15日、今年3月の大学等卒業予定者の就職内定状況を共同調査し、2月1日現在、82.4%(短大・高専含む)と前年より2.2ポイント増加したことを発表した。2年連続で内定率は回復傾向を見せているものの、まだまだ2000年代に入って一番高い数値を示した2008年の水準にはまだまだ届かないレベルだ。
一方、調査の対象となった今春就職を迎える学生達に人気の高かった企業はどこだろう。ダイヤモンド・ビッグアンドリードの調査によると、文系男子は三菱商事<8058>がトップ、次いで住友商事<8053>、三井物産<8031>と商社がトップ3を独占していた。理系男子は1位東芝<6502>、2位日立製作所<6501>、3位三菱商事<8058>というメーカーが上位、文系女子は東京海上日動火災保険<8766>が1位、以下2位が三菱東京UFJ銀行<8306>、3位がJTBグループと金融系、理系女子は1位が明治グループ<2269>、2位ロッテ、3位資生堂<4911>と食品メーカーが強かった。
この調査は毎年行われており、早くも現在就職活動中の来年卒業生を対象として、調査結果が発表されている。文系男子は1位が三菱商事、2位が住友商事と前年と変わらないが、3位には三菱東京UFJ銀行が入り、三井物産は10位に落ちている。理系男子はさらに激しい順位の入れ替えが起きており、1位はJR東日本<9020>だった。同社は2012年度は9位、2011年度は18位だったことを考えると大躍進だ。ここでも、昨年度1位だった東芝は5位に転落しており、テレビ事業不振を反映した影響が出ているとも見える。そして、文系女子は1位、2位が東京海上日動火災保険、三菱東京UFJ銀行と変わらず、3位には前年6位から住友商事が上がった。理系女子は1位ロッテグループ、2位は昨年17位から上昇したカゴメ<2811>、3位には同じく9位から一気に上がったサントリーホールディングスとなった。昨年1位の明治グループは4位、3位の資生堂は9位とダウンした。こちらは、食品関連の企業が強いのが特徴だ。
学生達は日頃の報道や決算状況を把握し、自分の就職活動に活かしていると言えるが、厳しい状況を乗り越えるためには、さらに、その業界事情を熱心に勉強している姿も伺える。売上実績の高い企業が多い自動車業界や建設・住宅業界などもランキング上位ではないが、将来を見据え、注目をしている学生も多いという。
その中のひとつである、住宅業界も新時代へ移り変わろうとしているが、その業界へ今年からチャレンジする人たちは厳しい就職活動をどのように乗り越え、今どのような思いを抱いているのだろうか。
インタビューを敢行したのは住宅メーカーアキュラホームへ4月から務める新入社員たちだ。“わずかながら上昇した就職率を就活の現場で体感したか”という質問に対しては全体的に女性の方がそれを感じる傾向にあった。また、“住宅業界を就職先に選んだ理由”としては、「人に感謝されたい」「ユーザーの喜ぶ顔が見たい」など、消費者にとって、大きな買い物である『住宅』を販売した時の達成感や、ユーザーの満足感を共有したいという気持ちを持っている新卒社員が多いと感じられた。だが、一方では「新税率導入後の消費税の影響で、住宅が売れなくなる不安がある」「住宅の減税対策はできる限り長期で続いて欲しい」など国の政策を現実的に受け止め、自分が勤める業界の先を不安視する部分も見られた。他に“キャリアビジョン”に関しては「早く一人前の営業として認められたい」(男性)、「5年後には住宅展示場の店長になりたい」(女性)など、女性の方がより具体的にキャリアビジョンを描いていた。
世間では“ゆとり世代”として一括りにして、何かと「扱いにくい」などの表現をしているが、厳しい就職難の時代を乗り越えた若人は強い信念を持つ者も多く存在しており、数年後、企業の中心として働く姿を想像できたのは、決して私だけではないはずだ。(編集担当:滝浦巧都)