アベノミクス効果による円安がガソリン価格や食料品、紙製品など日用生活用品の値上がりにつながっている。電気料金やガス料金も値上がりする。こうした中、大企業の正規労働者の報酬引き上げには期待できるものの、一方で、労働者のうちの35%を占めるまでになった非正規労働者の雇用条件の改善は蚊帳の外におかれてしまうのではないかという懸念は消えない。
実は、彼らこそ、所得増加分を消費に回す確率の高い層なのだ。労働者の3人に1人にまでなっている非正規労働者への待遇アップ策は庶民層の経済活性や疲弊する地域経済の活性化に欠かせない。
もともと、非正規労働者の所得は正規労働者の4割から5割程度にとどまっていると推測される。この層の所得アップは常に財布の紐を固くしておかざるを得ない状況から日常的に外食や観光・レジャーなどに回されていないだけに、こうした産業分野に還元される可能性が高い。
安倍総理は「政府の3本の矢で企業収益を高め、雇用や所得拡大につながるよう、物価のみが上昇するのではなく、企業の収益力の向上の成果が適切に労働者に配分されることが重要」とし「可能な限り報酬の引き上げを行ってほしいと産業界に直接要請している」としたうえで「25年度税制改正で従業員に利益を還元する企業を支援する」などで、さらのその方向性が強まるようプッシュしていく考えを強調する。
ただ、企業側は正規労働者への対応については前向きなところも大手に見られる中で、非正規労働者への雇用条件の改善にはやはり疑問符がつく。
社会民主党の福島みずほ党首は最低賃金を時給1000円以上に引き上げる政策を訴える。最低賃金が上がれば雇用者側は同じ仕事量を従業員を減らして調整しようとするため、失業者が増えたり、事業所に残った方も労働条件がかえって厳しくなるとの指摘も根強いが、20歳代から50歳代の所得の最も低い単身世帯の1割の層の消費実態が生活保護基準を下回っている(厚生労働省の検証)との現実もある。
こうした実態をみると、まず、賃金の最低ラインを引き上げることが正規労働者の報酬引き上げ以上に必要で、その結果、広い裾野で経済効果が生じ、社会の底上げにつながることが予測できる。
時給1000円の最低賃金設定により生じるコストアップ分が重荷になる小規模零細企業においては当分の間、中小零細事業所向け支援政策を行うなどを考えるべきだろう。
経済状況を睨んで、安倍総理は消費税引き上げを当初の予定通り来年4月から8%にするか判断しなければならないが、可処分所得が少ない非正規労働者が少しでも豊かになるよう、低所得層の所得底上げに本腰を入れるべきだろう。それができれば、これまでとは違う自民党の幅の広さを見せることにもなるだろう。(編集担当:森高龍二)