日本は自動販売機大国である。総数こそアメリカに次いで世界第2位の座に甘んじてはいるものの、人口や国土の面積からみると実質上は1位と言っても過言ではなく、なんと、およそ25人に1台の割合で自動販売機がある。海外規模でみると、そもそも自動販売機すらない国も多く、日本に訪れた旅行者はまず、自動販売機の存在とその数の多さに驚くという。
それだけに、自販機に対する風当たりも強い。日本のいたるところに自販機が林立し、どんな田舎町にいったって、山の中にでさえ、自販機が設置されている世の中。景観上の問題や、エネルギーのムダ使いではないかという声も上がっている。また場所的な意味でも現実的に飽和状態で、これ以上設置場所を拡大することが難しくなっている。そこで、自販機メーカーは生き残りをかけて、様々な工夫と改良を行なっているようだ。
まず、エネルギーのムダ使いについてだが、これについては今、日本の飲料水の自動販売機は100%「エコベンダー」に切り替わっている。エコベンダーとは、7月1日~9月30日の夏期期間中、電力消費の少ない午前中に商品を冷やし込んでおき、エアコンなどの使用によって電力需要がピークを迎える午後は冷却運転をストップして消費電力量をカット、CO2の排出量も抑制する省エネ型の缶・ボトル飲料自販機。1995年設置が開始され、今では全ての飲料水販売用の自販機はこのエコベンダーになっているのだ。
照明についても、最近の自販機には周囲の明るさを感知するセンサーとタイマーが内蔵されている。昼間は消灯し、夜は点灯。明るさと時間で自動的にコントロールできる上、屋内に設置されたものは、ビルなどの閉館時間帯には自動的に消灯されるようになっている。さらに、夜間点灯時はインバータで消費電力量を50%にしているのだ。
また、「省く」だけではなく「加える」方向の工夫もある。例えば、最近よく見かける電光掲示板つきの自動販売機では、災害時に災害関連の情報を流すことが出来るうえ、飲み物を無料で提供できる機能も設置され始めている。住所の書いたステッカーが貼られている機種も多いので、何らかの災害に見舞われて避難しなくてはならない状況の時には、自動販売機が大きな助けになってくれそうだ。もちろん、災害や緊急時に限らず、普段においても、人通りの少ない道に設置することで、夜間の犯罪を抑止する効果もある。
さらに最近ではAED付の自動販売機が急速に増えてきている。AEDは、心停止を起こして倒れた人に電気ショックを与えて蘇生を試みる、自動対外式徐細動器という機械。一般人でも容易に操作できるように、動作は自動化されており、万が一誰かが倒れた時には、救急隊の到着前にこれを使用することによって、脳に何らかの障害や後遺症が残る確率を低減させることができる。これには、社会貢献を印象付けることで飲料メーカーがイメージアップを図る目的も含まれているが、どんな形であっても、これから高齢化社会を迎えるにあたって、街中もAEDが普及することは大いに歓迎できることには違いない。
ともあれ、自動販売機をみていると、そこには細やかな気配りと、困難を工夫で乗り切る日本人気質が垣間見られるのだ。(編集担当:石井絢子)