大手商社7社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日)の2012年度中間決算は、三菱商事の最終損益が前年同期比22.8%減に、三井物産が25.9%減になったのをはじめ、伊藤忠商事、住友商事、双日を含めた5社が2ケタの最終減益に落ち込んだ。その最大の要因は、石炭や鉄鉱石の価格が中国の景気減速で値崩れするなど、前期まで商社の最終利益を大きく押し上げた資源部門、素材部門の採算悪化である。
資源価格の低迷は底を打ってもこの先、長期化するとみて、この部門への依存度が高い三菱商事は通期の最終損益見通し5000億円を3300億円に、三井物産は4000億円を3100億円に、双日は200億円を100億円に、それぞれ大幅に下方修正した。
一方、非資源部門の割合が大きい丸紅と豊田通商の最終損益は若干の黒字を維持し、伊藤忠商事と住友商事は2ケタ最終減益ながら通期の最終損益見通しを据え置いている。伊藤忠商事は金属以外の全事業部門が増益だったので、今後、資源価格、素材価格が持ち直せば業績がV字回復する可能性がある。
資源との蜜月が終わった今、大手商社はそれ以外の新たな収益源を開拓する必要に迫られている。資源分野や素材分野はサプライチェーンの最上流に位置するので、各社とも中期経営計画などではもっと川下に打って出る「川下戦略」、バリューチェーンの川上から川下までのトータルな流れの中で付加価値を創造していく「バリューチェーン戦略」を強調し、収益源の多様化を図ろうとしている。
たとえば三井物産、住友商事、丸紅、豊田通商は、生活関連産業の中でも「食」に着目し、その川上の農業生産法人、農業ベンチャーに相次いで資本参加している。農作物の出荷、流通、小売という川下方面では商社は自前のサプライチェーンを持っているが、農業よりさらに上流の肥料や農薬の供給でも商社が関与して、従来の農協組織の代わりにバリューチェーンの垂直統合を完成させようとしている。国内だけでなく、三井物産はブラジル、双日はアルゼンチンで大農場に出資したり、農業生産事業に乗り出したりしている。
農業はほんの一例だが、他にも不動産の証券化(三菱商事)、電気自動車の充電施設(住友商事)など、商社は持ち前のアグレッシブさを活かしてさまざまなビジネスへの進出を試みている。資金力、情報力、人材力を駆使して、従来の商社のイメージを脱した新しいビジネスモデルへの脱皮が始まっている。