成田空港は今年5月、開港35周年を迎える。この節目の年に、成田空港では航空自由化、いわゆる「オープンスカイ」が始まった。オープンスカイとは、航空会社が空港側と協議して、路線や便数を自由に決められることをいう。当たり前のことのようにも思えるが、実はこれまで、国際線の新規就航や増便を行なう際は、お互いの政府同士の2国間交渉で決められてきた。しかし近年、競争環境を築くために、オープン化の流れが世界的に広まっており、日本でも関西国際空港、中部国際空港などが先行してオープンスカイを取り入れている。それに続くかたちで3月31日、ついに成田空港も自由化の対象になったのだ。
オープンスカイになると、政府が決めるのは発着枠までになり、その範囲内なら、参入する航空会社の数に制限がなくなる。航空会社は自由化協定を結んだ相手国の、どの都市に何便飛ばすかを自由に決められる。さらに運賃も原則自由となることで、航空運賃も10~20%下がるといわれている。
成長するアジアの空港に対抗すべく、国は3年前から、成田空港のオープンスカイ実施に向けて、欧米やアジアなどの23の国々や地域と協定を結ぶなどの準備を進めてきた。また、成田空港側もオープンスカイに対応するため、新しい西側誘導路と横堀地区誘導路、横堀地区駐機場を改修し、年間の発着枠も2万回増えて27万回に拡大されている。
発着枠の拡大に合わせて、条件付ではあるものの、滑走路の使用もこれまでより1時間遅い午前0時まで認められたほか、4月1日からは7年ぶりに国際線の着陸料が値下げされた。さらに新規就航と増便を対象にした割引制度も適用している。新料金の効果は早速顕著に現れており、3月31日から大韓航空が成田―ハワイ・ホノルル線を新設したほか、6月からは米国ユナイテッド航空が成田―デンバー線を就航させる。また、アメリカへの便が週43便増便、韓国線も週21便増便されるなど、10月までに週87便が増便される予定だ。
また、国際線だけでなく、成田空港では国内線の増便も積極的に進めている。同空港の弱点である国内線充実させるため、昨夏に就航した格安航空会社LCCを重視しており、今春からLCC2社が1.4倍の週824便に増便している。さらに14年度中にはLCC専用ターミナルを完成させて拡大を図る見通しだ。3月からはすでに、第2旅客ターミナルビル63・64番ゲートラウンジ直下に、国内線用バスゲートの供用を開始しており、取扱い能力の高いバスゲート施設も拡充している。
成田国際空港が発表している2013年2月の空港運用状況によると、航空機発着回数は前年同月比3%増の1万6329回。旅客人数は同8%増の266万1124人だった。国際線が前年同月比4%減の1万3043回となり、前年割れとなっている一方、国内線は好調で、同45%増の3286回。これはLCCが国内線を大幅に拡充したことが大きく影響しているとみられ、その証拠に国内線の旅客数が同81%増の34万0640人にのぼっている。
日本国内のみならず、今回のオープンエアによって、海外LCCの参入も加速しそうだ。すでに就航している韓国のイースター航空(成田―ソウル)やシンガポールのスクート(成田―台北)のほか、韓国のエアプサン、ジンエアー、済州航空、中国の春秋航空、台湾の復興航空などが参入の動きを匂わせている。
オープンエアする空港が増えれば、旅行者の利便性は高まるが、航空会社にとっても海外で収益を拡大するチャンスが増える。しかしその分、国際的な競争は激しくなる。それは航空会社だけではなく、空港にとっても同じだ。とくに成田空港は、成長著しいアジアの各空港や羽田空港との競争にさらされている。成田国際空港グループは先日、2013~2015年度中期経営計画「イノベイティブNarita2015~選ばれる空港を目指して~」を策定しているが、世界的に「選ばれる空港」となるには、まだまだ厳しい道のりが待っていそうだ。(編集担当:藤原伊織)